かちゃり、と静かに部屋のドアノブが回った。時刻は午前4時。朝の支度をするにもまだ早い。
なるだけ音を立てないようにぺたぺたと歩みを進めて、小さな訪問者は私のベッドへと近づいてくる。
「おねーちゃん、おねーちゃん」
ゆさ、ゆさ。泣きそうな声で私を呼び、おそるおそるといった具合に静かに体を揺さぶる訪問者。
私はんぅぅ、と呻きながら時計を見、そして不安げにこちらを見下ろす妹の姿を認めた。
「どうしたの、美穂」
「あのね、あのね」
ふっくらと膨れたパジャマの下半身をもじもじさせながら妹は言いよどむ。
微かに香る刺激臭とその発信源を確認した私は彼女に起こったトラブルを察した。
「ああ、もしかしてやっちゃった?」
こくんと頷く彼女の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちる。小動物のようにぷるぷると震える姿が堪らなく愛らしいが、そこは我慢。
「ほら泣かないで。お母さんたち起きてきちゃうまえに取り替えちゃお」
安心させるようににっこりと笑いかけて妹を床の上に横たえる。
パジャマのズボンをずらすとほのかに黄色みを帯びたキュートな下着が現れた。それは私達の年齢では必要のないはずのもの。
赤ん坊や老人の排泄を管理するための下着であり、世間一般ではおむつと呼ばれるものだった。
「ふふ、今日もいーっぱい出たねぇ」
妹のおねしょの量は多い。なのでパンツ型おむつでは間に合わず、普段からテープ型のおむつを着用させている。
「やめてよ、恥ずかしいんだからっ……」
羞恥に頬を染めながら妹は両手で顔を覆う。その様子が手を取っ払ってキスして仕舞いたいぐらいに可愛いらしくて、私は密かに生唾を飲み込んだ。
ピリピリと音を立てておむつのテープを外し、おねしょを吸って濃い黄色にそまった吸収体とまだ毛も生えていない小さな割れ目に下を這わせたい衝動を堪えながら
ベッドの下から取り出したおしりふきでそこを丁寧に拭いてあげる。
「んふふー、お客さん痒いとことかありませんかー?」
「お姉ちゃん、それなんか違うから」
ジト目で睨んでくる妹も可愛い。ついクスクスと笑ってしまうが仕事はしっかりとこなしてゆく。
新しいおむつを下に敷いて前を引っ張りあげたら横モレしないように少しキツメにテープを留めて。
「ハイおしまい。寝る前にちゃんとトイレ行っとくんだよー」
「い、いちいち言われなくても分かってるっ」
ぽんぽん、とおしりを叩いてからかうと妹は顔を真っ赤にしていそいそと部屋を出て行った。……さて。
「今日もいーっぱいお漏らししたね……えらいよ、美穂」
おしっこをたっぷりと吸って重たくなった妹のおむつ。私は胸をとくん、とくんと高鳴らせながらその封印を紐解いた。
すこしだけ時間が経ってきつい臭いが混ざり始めたそれを愛撫するように舌で撫で上げてゆくと下腹の甘い疼きがぞくりと背筋を泡立てた。
下半身を包むパジャマの中に手を入れると、下着越しの濡れた感触が指先を包む。私の秘めた欲望が指先として形となり――
率直に言ってしまうと、私は変態だ。それも超弩級の変態だ。
なぜなら妹と妹のおもらしが好きで好きで仕方ないからだ。匂いを嗅ぎ、おしっこに濡れた股間を舌で丹念に舐め、羞恥に震える身体を抱きしめてキスしたい。
もちろんそれがとんでもなく危険な欲望だということは私にも分かっている。だから実際にそれを行動に移すことはない。
妹のおもらしおむつを味わいながら自分を慰める程度でどうにかなっているのは我ながら大した努力だと思う。(きっと傍から見たらそんなことはないだろうけど)
「ふわぁ~……ねむぅ」
「おやおや美咲ちゃん、今日は眠そうですねぇ。遅くまでテレビでも見てたんですかー?」
「うっさいわねぇ、私はあんたと違ってちゃんと勉強してるの。この前の期末で順位落としたから」
「わ、嫌味?学年でいつも10位以内に入ってる秀才から、おちこぼれの私への嫌味なの?赤点とって補修まみれの私への嫌味なの?むっきー!」
そんなくだらない事をだらだらと喋りながら私達は通学路を進む。ちなみに寝不足の原因はもちろんアレだ。
目覚まし時計が鳴る時間まで一人で盛ってたんだから当然だろうけど。
「あ、そう言えば今日は美穂ちゃんどうしたの?二人が一緒じゃないって珍しいね」
「美穂は朝の講習があるから先に行くって。なんか割と成績危ないらしくてさ」
「ふーん、双子の姉妹なのに性格も成績も全然違うのねー」
「いや、あれで美穂はやれば出来るんだけどいかんせんやる気がないから……」
「まあでもあのやる気のなーいゆるーい感じがいいんじゃん?なんというか癒し系でさー」
癒し系、ではないと思う。家の中では無垢で無邪気なお子様そのものって感じだ。
年の割に全然エロい知識とか持ってないし。おねしょも治ってないし……。
「あ、でもあたしは美咲のそういうしっかりしてるとこも好きよ?頼りになるしかっこいいし」
「はいはい、そりゃどうも。あっ、ちょっと急がないとHR遅れるかもよ?」
「わわっ、それは困るわ。ちょっと走るよ美咲っ」
――そう、私の愛情がアブノーマルだということは私自身よくわかっている。この想いが受け入れられてはいけないことも。叶ってはいけないことも。
しっかりものの姉を演じることで妹の側に寄り添うことができるのもきっとそう長い間ではないだろう。そのうち妹にも恋人ができたりして
私から少しずつ遠ざかっていくに違いない。それがわかっているから、この秘めたる劣情を自らの中に隠したまま墓場の中まで持ってゆくのだ。
誓って、そうするつもりだった。その決意に嘘はなかった。
だがしかし、しばらくして私の誓いはあっけなく破られることとなる。私が最も恐れていた、最悪の形で。