ある日の昼下がり、私が家に帰って来ると、夏子ちゃんは家でアニメを見ていた。上半身は普通のパーカーだが、下半身はショーツ一丁という、驚きの格好で。
「ただいま、なっちゃん」
「お帰り~」
「なっちゃん、どうしてそんな格好をしてるの?風邪ひくわよ?」
「でも・・・」
夏子ちゃんはここで口籠ってしまった。いつものことだ。そのうち寒さと羞恥心に耐えられず、下に何か穿くことだろう。
私はそれ以上指摘しなかった。私は自室に入ると、まず上半身だけ部屋着に着替える。そして、
「うん、これこれ。『部屋着の』下着って言ったら、やっぱり『これ』よね♪」
そう呟きながらタンスから取り出したものは、オヤスミマン。私はどうやら成長のためのエネルギーが、身長を伸ばす方に優先的に使われるようだ。
そのため、背は高いものの、腰や太ももは意外にも細い。よって、私はオヤスミマンを何の障害も無く穿くことができるのだ。
小学6年生の頃まで穿いていたこのパンツ・・・。他の『おむつ』よりも凝ったデザインでありながら、おねしょで眠れなかった夜ではとても頼もしい存在だった。それを、今の私はまるで普段着のように穿いて過ごしている。
正直な話、私は他の人ほどディズニーのグッズには関心が無い。だが、子供の頃は、よくディズニーランドやディズニーシーに連れて行ってもらったことがある。
それはたぶん、私が可愛らしさを強調した人形などよりも、少々リアリティがあって、実際に動く着ぐるみの方が好きだったからかもしれない。
しかし、おむつは別だ。ディズニーが版権にうるさいことはよく知っている。
某人気キャラクターの著作権が厳重なのは、草創期に苦労して生み出したキャラクターを某映画会社に乗っ取られてしまったからという有名な逸話がある。
それ故、紙おむつという大量消費の象徴ともいうべきものでも原作に忠実なデザインでなければならないという厳しい縛りが、このおむつをおむつはずれ期の幼児たちの心をしっかりと射止めたのだろう。
かく言う私もそんなおむつに心を惹かれた者の一人だ。ただ、私は明らかに本当のユーザーよりも体が大きい。たぶん
「まだおねしょをしてるから」
という理由でごまかすことは不可能だろう。その点で、私は異質な人間だと思う。背が大きいのに、子供用のおむつが余裕で穿けてしまうのだから。
そして私は、大人用のおむつとは本当に相性が悪い。
大人用のおむつは、皮膚がある程度頑丈になってきた大人が使うことを前提にしているためか、子供用のおむつのようなふわふわすべすべとした心地よい肌触りは無い。
サイズが大きくなっただけで、こんなにも質が悪く感じられるのかと思うと、一晩に計り知れない量のおしっこを漏らしてしまう自分と、守るどころかチクチクと襲い掛かって来る大人用おむつが嫌で仕方が無かった。
だから完治した当時はおむつが嫌だったのかもしれない。
つまり、一晩に普通のおしっこ1回分程度のおもらしのみだったら、オヤスミマンでも問題は無かった。そして、大学生になっても、きっとおねしょを治そうなどと頑張ることはしなかったことだろう。
「はぁ、やっぱり気持ちいいわ・・・」
「さなちゃん、何してるの?」
「うん?部屋着に着替えてるだけよ?」
私がそう言うと、夏子ちゃんはそれ以上話さなかった。ただ、彼女の熱い視線が、私のお股を優しく包む、白っぽい『パンツ』に注がれていることだけは分かった。