私の大事な趣味を奪ってくれたくせに、よくもその元凶をずけずけと言ってくれたもんだなぁ・・・。
夏子ちゃんの答えを聞いた途端、私の堪忍袋の緒が切れた。
「そうよ!私の大事な大事な趣味を奪ったのはあんたでしょ!
それに、趣味だって人それぞれでしょ!?私がおむつ好きで、何が悪いの!?私が何か犯罪でも犯した!?
確かにおむつが好きってことは、『変態』だとか、『キモい』って言われるリスクは高いことは私だって十分分かってるわよ。
でも、あんただっておむつ穿きたいんでしょ?なのに、おむつに興味ある奴が、どうしておむつ好きの子にそんな手厳しいことが言えるのよ!?
もうおむつなんて買わない!!」
「ごめ゛ん゛な゛ざい゛ぃ゛~」
「泣いて謝ったって知らないわよ!
『おむつ好きは頭おかしい』
って言ったのはあんたでしょ!責任取ってもらうわよ!」
「ふええぇ~ん!だがら゛ごめ゛ん゛な゛ざい゛っで言っでる゛の゛に゛ぃ゛~!ざな゛ぢゃん゛の゛ばがぁ゛~!!」
趣味を嗜む権利を奪われたためなのか、夏子ちゃんの言動が気に入らなかったためなのか、はたまた本当は夏子ちゃんのことが嫌いだったのか・・・。
裏の理由は自分でも分からないが、『手厳しくはできない』と思っておいて、つい手厳しい暴言を投げつけてしまった。
どうしてそんな厳しいことを言ってしまったのかは、自分でも分からない。私は本当に、
『怒りに任せて』
夏子ちゃんを叱ってしまった。
親友の夏子ちゃんを幼稚園児のごとく大泣きさせるほど厳しい暴言をぶつけてしまったこと、
『もうおむつなんて買わない!!』
と、自分の心に厳しい制約をかけるようなことを言ってしまったこと・・・。
もう後戻りも訂正もできない。私の一貫性を要求する性格が許してくれない。今の私にできること・・・。それは、自室の扉に寄りかかって、涙を流すことだけだった。
この日は、私が料理を振る舞った。夏子ちゃんは何とか機嫌を取り戻したようだが、それでも『良くなった』とは言えなかった。
そして、風呂の時間も過ぎ、寝る時間となった。おねしょをしていた頃は、お風呂から上がるとすぐにトイレでおしっこをさせられ、その後におむつを着けてもらった。
小学生の頃も、中学生の頃も、高校生になっても、おねしょが続く限り、お母さんは私を赤ちゃんのように扱ってきた。
しかし、ウザいわけではなく、逆に私のおねしょに対する恐怖心や羞恥心を取り除くという意味では非常に有用でありがたい方法だった。
おねしょをしなくなった今でも、あの声がとても心地よく感じられる。
「私がおねしょしちゃったら、あの子も許してくれるかな?その逆だったら、私もあの子のこと、許してあげなきゃ」
夏子ちゃんはもう既に眠っている。私はそう呟くと、静かに瞳を閉じて、眠りについた。