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トップ  >  シュージ作  >  ピート君の一日〜赤面する日〜
そろそろ寒い時期だけど、今日はサイコーのお天気。  家でコタツに潜っているのもいいけれど、せっかくだからマナちゃんのうちに遊びに行こうと思うんだ。  急いで走るとしっぽが風で冷たいから、ゆっくりお散歩して行くの。 「気をつけてねピート、夕方には帰って来るんだよ」 「うんパパ、行ってきます」  マナちゃんのおうちに行く近道からは離れちゃうけれど、 僕はこの道を通って行くことが一番多いんだ。  そこは柵で囲まれてて、明るい絵が描いてある大きな建物の庭に、僕と同じくらいの年の子が何人も走り回ってる。  みんなとても楽しそうで、僕も見ているだけで楽しくなってきちゃう。  ここは、幼稚園。  いつかは僕もあの中に入って一緒に遊びたいんだけど、あの子達の中に僕みたいな耳としっぽがある子はいないんだ。  耳としっぽがある子は入れないのかな。  そう考えるとなんだかつらい。  パパは、「いつか入れてあげる」と言うけれど、本当にそうなるといいな。  あまり長くここにいると、マナちゃんと遊べる時間がなくなっちゃう。早く行かないとね。  マナちゃんのおうちに向かって歩いてたら、なんだかおしっこしたくなってきちゃった。  まわりを見渡してもトイレを使わせてもらえそうなところは無いし、人もいっぱい歩いているから、そのあたりでしちゃうのもはずかしい。  ちょっと前までなら困っちゃって、お漏らしでズボンをぬらしちゃったかもしれないけど、実は今はだいじょうぶなんだ。  ズボンのおしりに手を当てると、ちょっとふくらんでいてやわらかい。  僕は今、パパにあててもらった紙おむつをしてるんだ。  本当は一人でトイレに行けるようになったんだけど、パンツよりおむつの方が大好きなの。  最初はこっそり自分であててみたんだけどうまくいかなくて、どうしてもおむつをしたかったからパパに頼んでみたんだ。  パパは僕が大好きなかわいいおむつを買ってくれて、いつでもおむつをかえてくれる。  やさしいパパで、とてもよかったなあといつも思うんだ。  歩道に立ち止まって力をぬくと、ちょっとずつおしっこが出て、おむつの中があったかくなっていくのがわかった。  寒いからちょっと震えるけれど、おしっこしたばかりのおむつが気持ちいいからあまり気にならない。  いつまでもこうしていたいけど、ぬれたおむつはだんだん気持ち良くなくなっちゃうから替えないとね。  いつも持ってるバッグにおむつを入れてるから、僕はパパがいない時でも自分でおむつを替えられるんだよ。  だれかにつけてもらう時よりはうまくいかないけれど、れんしゅうしなきゃうまくならないよね。  ちょうど近くにあった屋根のあるバスのまち合い所で、ベンチに新しいおむつを広げた。  この中なら外から見えないし、すぐに替えれば人は来ないよね?  こんどのおむつはワンちゃんの絵で、テレビでちょっと見た事があるけど名前はしらない子だ。  広げたおむつのとなりに座って、ぬれちゃったおむつのテープをバリバリってはがすと、 おしっこで重くなったおむつが開いて、おちんちんが風で冷たいや。  ウェットティッシュもつめたいから、はやく拭いて新しいおむつをつけないとね。  広げたおむつの上に寝ころがって、まずは後ろの切れ目にしっぽを通す。  この後テープで切れ目をくっつけておむつの後ろを止めるんだけど、普通の子が使うおむつにはこれがないみたいだよね。  そして、今度はおむつの前あてをひっぱり上げる。  ここまではいいんだけど、一人だとテープがずれちゃってうまくいかないんだ。  ずれたおむつはおしっこがもれちゃうからしっかり止めたいんだけど、やっぱり一回じゃできないよ。  何回もやりなおして、やっとまっすぐにテープがつけられたんだ。  早くおむつを替えていこうと思ってたのに、すっかり忘れちゃった。  もしかして、もう人が見てるかなぁ?  「あ……」  思わず声に出ちゃった。  まち合い所の入り口に、いつのまにか人が立ってたんだもの。  いつからいたんだろう?  僕がおしっこしたおむつも見られちゃったのかな。  うう、どうしよう。  僕、怒られちゃうのかな?  かげに入っていて、よく見えなかったその人が、まち合い所に入ってきた。  その人は……僕よりずいぶん大きい、お兄さんだった。  目があった時、お兄さんは驚いたような顔をしていたけれど、僕はもっとどきどきしてる。  「……お、怒らないで……」  やっとの事で僕がしゃべったら、お兄さんははっとした後に、眉を吊り上げて言ったんだ。  「そ、そうだな。大人に知られたら、きっと怒られるぞ?  みんなが使う所を汚しちゃってさ」  お兄さんが指差した方を見て、また僕はどきりとした。  さっき驚いたはずみで、外したおむつを落としてベンチを汚してしまっている。  どうしよう、このままじゃ……  「お兄さん、誰かに言ったりしないで!今、僕がきれいにするから!」  お兄さんはちょっと考えた後、思いもしなかった事を言ったんだ。  「そうだな……手伝ってやるよ」  「本当!?」  「うん、今日一日俺の言う事を聞いてくれれば、ね。  誰にも言わないし、片付けも手伝ってあげる」  「え……」  困ったけれど、あんまり考えてる時間はなさそう。  もうすぐバスが来ちゃう時間だ。  「……うん、お兄さんの言うこと、聞くよ」  どっちにしろ、このまま迷ってたら大人の人が来ちゃうもの。  早く片づけてここを出なきゃいけないんだ。  「約束だぞ?よし、早く掃除しちゃおう」  僕はそれにうなずくと、お兄さんと一緒に急いでベンチをきれいにしたんだ。  ベンチを拭いて、おむつをビニール袋に入れて外に出ると、ちょうど入れ違いで誰かが待ち合い所に入っていった。  怖そうな男の人で、悩んでたらきっと怒られちゃったんだろうな。  「お前、今から俺の家に来いよ。このすぐ近くだからさ」  待ち合い所から出て少し歩いたところで、お兄さんがそう言った。  言うことを聞くって約束したし、このまま別れちゃうわけにもいかないから、僕はこんどはすぐに答えた。  「うん……行くよ」  マナちゃんとは遊ぶ約束をしてたわけでもないし、今日どうしても行かなくちゃいけない事もない、よね?  それに、約束をやぶったら、どうなるかわからないもの。 ◇  お兄さんの家は本当にバス停の近くで、大通りからちょっと外れたマンションの1階にあった。  「親は休みでも仕事で居ないからさ、一人で退屈してるんだ」  部屋に入れてもらった僕の後ろで、お兄さんが鍵を閉めながらそんな事を言った。  「だから、僕と遊ぶの?」  「そうだよ。それに、ちょっと興味があってさ。お前、トランスヒューマンだろ?」  「うん、そうだよ」  僕は、耳としっぽを大きく動かしてみせた。  ねこの耳としっぽがあったり、羽が生えてたりする人の事をトランスヒューマンって言うんだって、パパに聞いたんだ。  「おお、飾りじゃなくて本物なんだな。テレビ以外じゃはじめて見たよ」  なんだかお兄さん、目がかがやいてるみたい。  「じゃあ、ジュースか何か持ってくるからさ。そこのベッドにでも座ってて」  そう言って、お兄さんはドアを開けてどこかに行っちゃった。  この部屋には、本やノートが置いてある机やベッドがあって、たぶんお兄さんの部屋なんだろうな。  本棚にはロボットのプラモデルや人形を置いてある段があって、よく見ると僕みたいな耳と尻尾がついた男の子の人形がいくつか置いてあるみたい。  トランスヒューマンと友達になりたかったのかな?  他にも気になるものはあったけれど、お兄さんがジュースとお菓子を持って来たから、ゆっくり見るのはまた後にしようかな。  「お待たせ、っと」  お兄さんはお菓子を折りたたみ式のテーブルに置くと、机の椅子にすわった。  「それでもつまみながら、えーと。  まあ、何をするか決めてたわけじゃないんだよな」  そう言ってお兄さんはちょっと考え込んだ。  「ねえ、お兄さん」  「ん、何だ?」  お兄さんの話が終わったみたいだから、僕はあの人形について聞いてみる事にした。  「あの人形、僕みたいだよね。トランスヒューマン好きなの?」  それを聞くとお兄さんは、ああ、と何か思い出したみたいな顔をした。  「そうだな。テレビで見てから、興味があったんだ。人間とは色々違うらしいし」  「うん、耳とか?」  「そうだな、色々……何でも言うこと聞くって言ったよな?」  「うん」  お兄さんに助けてもらってした約束だもの。  怒られずにすむなら、その方がいいよね?  「人間と違うところ、調べてみていいか?」  「しらべるの?」  「そう、耳とか尻尾、触らせてくれよ」  うーん。  耳とかしっぽを触られるとくすぐったいけど、けっこうみんなに触らせてあげて慣れてるから、いいかな。  「うん、いいよ」  僕はベッドから立ち上がると、お兄さんの椅子の前でしゃがんだ。  「お前、約束守ってくれるんだなー。良い子だな」  そういいながら、お兄さんは僕の頭をなでる。  こうされるのはちょっと気持ちよくて、好きだな。  その後に、耳にあったかい手で触られる感じがした。  「うわ、やわらかい耳。いい手触りだな」  やっぱり、ちょっとくすぐったい。  「次は尻尾を調べていい?」  「うん」  僕はしっぽを動かして、お兄さんに差し出した。  「ああ、そうじゃなくてさ。生えているところを見せろよ」  「え、おしり!?」  それは、恥ずかしいなあ。  「言うこと聞いてくれるんじゃなかったっけ」  お兄さんと、約束したから見せなきゃいけないんだけど。  やっぱり、ズボンと……おむつを脱がないとダメなんだよね。  僕はお兄さんの前で立ち上がって、ハーフパンツのジッパーを下ろした。  やっぱり恥ずかしくて、きっと僕の顔は赤くなってると思う。  ひざまでハーフパンツを下ろして、下はもう紙おむつだけになった。  「そういえばお前、おむつしてるんだよな。トイレでできないのか?」  お兄さんの質問に、僕は首を振る。  「ううん、できるよ。できるけど……」  「違うのか?という事は、おむつ好きなのか」  うん、と小さく首を縦に振る。  「ふーん、よくわかんないけど、赤ちゃんみたいだな、その格好」  「うん……あ、おむつを外すね」  「ちょっと待った」  テープに手をかけた僕を、お兄さんが止める。  「なに?」  「トランスヒューマン用のおむつって、特別なんだよな。  CMじゃ見た事あるけど、動いててよくわからなくてさ。  ちょっと見たいから、椅子につかまって、お尻をこっちに出してよ」  僕は言われたとおりに、お兄さんにお尻を向けた。  「へえ、後ろにもテープがついてるんだな。真ん中の切れ目から尻尾を出すようになってるんだ」  「あの、もういい?」  「そうだな。じゃあ、おむつを外そうか。俺がやってやるから、そこに寝ろよ」  お兄さんはベッドを指差す。  「うん」  ベッドの上に仰向けに寝る。  この格好は、お父さんやマナちゃんにおむつを替えてもらう時と同じだ。  でも、初めて知った人にやってもらうと、やっぱりどきどきする。  「じゃあ、外すからな」  お兄さんが紙おむつのテープに手をかける。  「うん……あれ?」  ふと窓を見たら、みおぼえのある人影が見えたような気がした。  僕の様子が気になったのか、お兄さんも手を止める。  「どうし……うわっ!?」  大きな音がして、突然窓ガラスが砕け散った。  同時に飛び込んできた何かがお兄さんの額を直撃する。  「痛っ!なんだ!?」  床に転がり落ちるそれは、ジュースの缶くらいの大きさで、端からL字型の取っ手みたいなものが飛び出している。  「手榴弾!?」  次の瞬間、缶から吹き出した白い煙が部屋を包み込んだ。  あたりは真っ白で、僕は何も見えなくなっちゃったんだ。  聞こえてくるのはシュー、と煙が出る音と、あわてるお兄さんの声ばかりで。  そんな中に、よく聞き覚えのある声がまじってたんだ。  「ちくしょう、なんだってこんな事……」  「あたしの友達に、なんて事してるのさ」  「だ、誰だ!」  少し、風を切る音がする。  お兄さんが、見えない誰かを探して手を振り回してるんだ。  「ピート君もだめでしょー、知らない人についていっちゃ」  「その声……マナちゃん?」  「うん、今日はなかなか来ないから、探したんだよ」  優しそうな、いつものマナちゃんの声だ。  でも、その声がお兄さんに対する時は怒ってるみたいになる。  「さて、小さい子をさらっちゃう悪い子にはおしおきしなきゃ。……覚悟してね」  「ひっ、ぎゃあああ!!!」  物を叩いたような、すごい音がして、その後に沢山のものがバサバサと落ちていく。  きっと、本棚が倒れたんだ。  「なんだよ、この力!こんな、細い腕なのに!?」  お兄さんの苦しそうな声が聞こえる。  「あなたが弱いんじゃない?大きな体してるのにね。さあ、これでおしまい」  「がはっ」  搾り出すような声を出して、お兄さんの声は聞こえなくなった。  「さあ逃げるよ、ピートくん!」  「う、うん」  何が起こったのかわからなかったけど、煙の中でかすかに見えたマナちゃんの手をとり、立ち上がる。  強い力に引っ張られて、僕は煙の中を一目散に駆けていった。 ◇  煙が引いた後、部屋の中にいるのはピートを連れ込んだ少年だけだった。  散らかった部屋で目を回している彼は、裸に紙おむつ一枚という姿にされて転がっているのでした。 ◇  「あぶないところだったねー、ピートくん」  いつもと変わらないマナちゃんが微笑みかける。  僕たち二人は、窓から逃げ出した後、人気の無い道を歩いていた。  「うん、恥ずかしかったかも……」  「恥ずかしかったどころか、エッチな事されそうだったでしょ」  あの時は約束のことで必死でわからなかったけど、裸になったらエッチな事をしてたと思う。  「うん……でも……」  「何か脅かされてた?でも、だめだよ。エッチな事は好きな人としかしちゃいけないんだよー?」  「……そうだよね、助けてくれてありがとうね、マナちゃん」  「ふふ、どういたしまして。今度から知らない人についていっちゃだめだからね」  「うん、そうするよ」  「そうそう。それに、エッチな事したいなら、ピートくんのパパやあたしに言えば、いつでも……あー、赤くなっちゃった」  マナちゃんがちょっと意地悪そうに言う。  たしかにそうなんだけれど……あらためて言われると、なんだかとっても恥ずかしい。  きっと、お兄さんの部屋にいた時より、もっと顔が赤くなってると思う。  「もう夕方だから、帰ろうか。……でも、結局ピートくんと遊べなかったからなー。  今日は、ピートくんの家に泊まっちゃおうかな?」  「え、今日も僕のパパと一緒に寝るの?」  「ううん、今日はピートくんと。知らない人にピートくんを取られちゃいそうになって、くやしいもん」  「え、それって……あ、待って!」  突然走り出すマナちゃんを追いかけて、僕も走り出す。  「ほら、早くピートくんの家に行こうよ!ピートくんもそのままじゃ寒いでしょ?」  「え?」  走りながら下を見ると、僕はまだ、シャツに紙おむつ一枚の格好のままだったんだ。  それがまた恥ずかしくなって、それから家に着くまで、一心不乱に走り続けたんだ。  色々と恥ずかしいことばかりの一日だったけど、マナちゃんと……好きな人と一緒に寝られるなら、いい一日だよね?
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