あの事件から10日経ったある日、二人は思わぬ形で再会を果たした。
とある街角で、聞き覚えのある声をかけられた。
そして振り向いてみると、そこに例の彼女と母親が並んで立っていたということだ。
「お兄ちゃん、お久しぶり!」
なぜだろう・・・。顔や体こそは彼女に変わりはないが、なぜか別人なのではないかと錯覚してしまう。
日常的に関わっているわけでもないのに馴れ馴れしく挨拶されたからか。
俺の頭はそう結論づけた。
だが、同時にある種の喜びも伝わってきた。
再開できたこと自体が嬉しいのではない。
彼女が俺のことをきちんと覚えていてくれたということなのだろう。
俺の頭はそう結論づけた。
「よう」
彼女の挨拶につられて、俺も馴れ馴れしい口調で挨拶をしてしまった。
顔を覚えてくれていても、普段からの付き合いが無い人にそんな口で話すのは無礼なのではないかと思った。