男は少女に背負われていた。
目を瞑り、疲弊した身体は自力で立つことさえ出来ないでいる。そんな男を背負い、少女はゆっくりと静かで何の物音のしないまちの中を歩いていた。
「……」「……」
二人とも喋ることはなく、その息遣いが聞こえるだけだった。
「このまちは今や誰もいない……廃墟のようなまちじゃ。来たのは、近くのまちの子供か、おぬしだけじゃ」
「……子供?」
「あぁ、何でも……このまちは特別な場所らしいからな。祭壇に供物を捧げるために来るんじゃ」少女は言う。どこか寂しげな声色で。
(続く)