恋とはどんなものかしら?


そう思っていたのも今は昔。あたしは初めて恋をした。だけど、それは実らない恋。どんな魔法も届かない恋。理由は3つ。


1つ目は、好きな相手が私と同じ女の子なこと。


2つ目は、あの子が住むのは、私がいる「魔法」じゃなくて、「カガク」が発達したところであること


3つ目は……


 


あたしの名前はコロン=R=ムーンドレイ。王立クレイヒンド魔法学校に通う基礎学科の5年生。年は12歳。住んでいる場所は王国の首都、ファンガスタのリゾルト地区の4番地。パパは王国騎士団の第3騎士団副団長で、ママは元王国魔法騎士団で、魔女部隊の隊長をやった凄い人。そんな2人の子供があたし。髪の色はママから受け継いで綺麗な白色。目の色はパパとママのとは違う瑠璃色。髪は長いから、リボンでツインテールに結わえてるの。でも、友達からは猫みたいって言われる。


 でね、あたしが恋したのはびっくりする出会いからなんだよ。今日はその出来事を話しちゃうね。


「じゃあ、明日ね」


「うん!明日」


友達と別れたあたしは、家に帰る前にあるところによることにしたの。そこの名前は「幻影堂」。あたしが最近見つけたお店で、路地裏に隠れるようにあるんだけど、とても綺麗なアクセサリーや魔法石を扱っている場所なの。なんでもこの王国とは違う、遠い遠い国から来た人なんだって。


「いらっしゃ…ああ、コロンちゃんか。ゆっくり見ていくといいよ」


お店の主人さんの名前は「カナザワ」さん。でも、たまに来る人とかは、別の名前で呼んでるみたい。


「いらっしゃ…」


あたしが魔法石を色々選んでるときに、その人は来たの。


「こんにちは…というよりはお久しぶりね。氷室君。いや、今は金沢君だったっけ?」


あたしと同じくらいか小さいぐらいの、黒いドレスを着た女の子。あたしよりも綺麗な白髪。金と銀の瞳。魔法石が嵌った腕輪を着けた、不思議な女の子。


「何の用だ?もう私は隠居した身だぞ」


「カナザワ」さんの口調が、強くて怖い。あたしはそっと棚の陰に隠れる。


「あれ?旧友の顔を見るのに理由が必要かな?」


女の子は軽い口調で返した。あの子が纏う雰囲気、なんだかグランマに似ている。


「もう私はお前らに関わるのはやめたんだ。そんな下らない用なら、もう済んだだろ。帰れ」


「カナザワ」さんが魔法で店のドアを開けた。女の子はにやりと笑って、「カナザワ」さんのいるところまで歩く。


「ええ。さっきのは嘘。まあ、その理由もあったけど、本来の目的は違う。私は、あるものを貴方に届けにきたの」


その言葉に、「カナザワ」さんが眉を動かした。あたしからはちょうど死角になるところで、女の子は何かを取り出した。それを「カナザワ」さんに渡す。


「これは…」


「カナザワ」さんが驚いた声を上げようとするのを、女の子は人差し指でとめた。


「あまりこれは他言するべきではないわ。じゃあ、さようなら」


女の子は開いた扉から出て行った。あたしは適当に綺麗な魔法石を手にとって、「カナザワ」さんのとこに向かう。「カナザワ」さんは、いつもどおりの顔をして、あたしが出した魔法石を見て、値段を言った。あたしはその代金を払って、店を出る。何も聞かれなかったことが、凄く怖かった。だから、お店を出たら、大通りまで、一気に走ったの。


「ふぅ…」


大通りの街灯に寄りかかって、荒くなった息を整える。手には、さっき買った魔法石を握り締めていた。色は、ルビー。私はコバルトの石を買おうとして、間違えちゃったみたいだ。けど、もうあの店には戻れない。仕方がないから、近くにある、お気に入りの喫茶店で紅茶を飲んで、それから帰ろうと自分に言った。


「いらっしゃいませ」


ウエイトレスさんに導かれて、テラス席に腰を落ち着ける。席の数は3つ。あたしは開いた席の1つに鞄を置き、いつも頼むハイドランブルーティを頼んだ。そのあと、魔法紙でできたメニューとにらめっこを始める。お小遣いには余裕があるし、ケーキでも頼もうかな。


「なら、それは私がおごってあげてもいいよ」


その声に、あたしはメニューから顔をあげ正面を見た。


 さっきの女の子が、目の前で笑いながら手を振っていた。


あたしは咄嗟に立ち上がろうとして、


「ダメ。今立ち上がると、凄く怪しまれるんじゃないかしら」


女の子に先手を取られた。あたしは渋々その言葉に従って浮き上がりかけた腰を戻す。


「そうそう。いい子ね」


自分より大差ない感じの女の子に、そう言われても嬉しくない。


「自己紹介がまだだったわね。私の名前は…いくつかあるけど今日は本名で…セルフィム=F=ファレシスカンス。貴方は?」


「あたしの名前はコロン=R=ムーンドレイ」


「ムーンドレイ…ならおじい様はカフドレン=ムーンドレイかしら」


「あれ?グランパって有名人だったの?」


セルフィムはその言葉を笑顔でごまかした。ただ、その瞳は、あたしではない誰かを映しているようだった。


「貴方、今何年生?」


紅茶が届いてから、セルフィムは会話を再開した。あたしは基礎学科の5年生であることを告げると、セルフィムの顔がにやりと歪んだ。


「なら、水晶占い術の講義はしたね?」


あたしはその質問に頷いた。セルフィムはどこからともなく水晶玉を取り出した。


「これ、あなたにあげる」


セルフィムの言葉に、あたしは凄く戸惑った。授業では水晶玉は学校に保存してあるのを使う。だけど、もうすぐあたしは基礎学科を卒業し、応用学科に進学することになる。そうなると、自分用の水晶や箒は絶対に必要になる。友達のエルスィも最近自分用の水晶を買ったばっかだ。けど、あたしはママのお古を貰うことになっていた。けど、それじゃ、少しばかり、嫌だった。


「さて、私はそろそろ行かなきゃ」


セルフィムは、水晶を置いて立ち上がる。あたしはこの水晶を貰うかどうかをはっきりセルフィムに言おうとして、逆に、


耳元であることを囁かれた。


「はうっ」


びっくりした。どうして、そんなことを、知ってるの!?


「ふふっ」


セルフィムは軽く笑ってから手を振って街の中に溶け込んでいった。あたしはその姿を見送るだけだった。だって、あんなことを言われちゃ、ほかの事は忘れちゃうよ。


 仕方が無いから、水晶はお家に持ち帰った。ただいまの挨拶をしてお家に入る。台所のほうから「お帰りなさい」の声が聞こえた。あたしはそのまま真っ直ぐ自分の部屋に向かった。鞄と水晶を置いて、今度はママのところに向かう。ママはエプロンをはずして、リビングであたしを待っていた。あたしはママに飛びつく。もう一度ただいまを言った。ママは頭を撫でてお帰りなさいを言う。そして、ママの手はあたしの下半身へと伸びていく。


「今日もいっぱい出ちゃったの。仕方ないわね」


ママはあたしのスカートの中に手を入れ、優しい声で言った。あたしは少しだけ恥ずかしくって、顔をほんのり赤くする。あたしがスカートのホックをはずして、それをソファの上に置いた。あたしのお股を包んでいるのは、皆が着るようなパンツではなくて、ちっちゃい子供と同じ、おむつだった。


 あたしがおむつはずれできていないのは理由は、あたしの家のご先祖様にあるらしいの。ママの魔法家系が水の精霊との契約をして、以来ママの家系は代々水や氷といった魔法を得意にしてるんだって。あたしはまだまだ基礎だから、属性魔法はうまく使えないんだけど、水だけはうまく使えるの。でね、そのかわり、体は水に惹かれやすいんだって。だから、あたしはまだおむつがはずせないの。ちなみにママも応用学科を卒業するまではずせなかったらしいの。


「ほら、準備できたから、ここに座りなさい」


ママがおむつ交換用のマットを敷いて、その上に正座して座った。まわりにはおむつ交換に必要なものが、すべてそろってる。あたしはその上に座って、仰向けに横になる。しばらくは動かないでじっとしなきゃいけない。そうしてる間に、ポチっという軽い音共にオムツカバーのホックが外されていく。そうして、前当てが開くとあたしが汚したおむつがママに見られる。ママはあたしに腰を浮かすように言って、あたしはそのとおりする。ひゅっとおむつが抜かれると、新しいおむつがお尻の下に敷かれる。それから念入りにおしっこの出るところを吹かれる。あたしはつい「ひゃっ」という声を上げてしまった。


「もう、変な声上げないの」


ママは叱りつつパウダーをおまた全体にはたいて、最後におむつをきれいにまとめてから、カバー閉じてホックを留める。紐を結んで、完成。


「ほら、もう自由にしていいわよ」


ママは後片付けをするからと、あたしを先に立たせる。あたしは言われたとおりにスカートをつけてから2階に戻る。部屋に入ると、何かまぶしい。手で目を守りながら見てみると、セルフィムからもらった水晶が、輝いていた。


「なんだろ…」


水晶を持ってみると、なにか文字が映ってる。けど、あたしの国の言葉じゃないみたい。そいて、光が部屋中に満ちていき…


 あたしはあの子と、出会ったの。