昔、おばあちゃんから聞いたんだけど、「カガク」の世界というのがあって、そこと繋がる特別な道があったんだって。でも、「カガク」の人たちが我儘だったから、縁を切っちゃって、その道も封印されちゃったの。


 じゃあ、あたしの持っている水晶は、いったいなんなのかなぁ?


 


 初めてシオンにあったあの日から、1週間くらい経ったかな?


 あたしはいつも通り学校に通っている。授業の難しさが増し、一回一回の授業でやる内容が多くなってきてる。なんでも、近く隣国と戦争があるかもしれないんだって。パパも最近は忙しいようだし、ママもパパを支えるために一生懸命頑張ってる。


 だから、最近はあんまり構ってくれないんだ。


 少し寂しいけど大丈夫。あたしには新しいお友達ができたから。


「ねぇねぇ…シオンはどんなおむつ…つけてるの?」


水晶の向こうに映し出されているシオンは、少し疲れているように見えたの。けど、シオンはあたしの質問にいつも、真面目に答えてくれるの。


「そうだね…基本は布だけど、紙も時折使うよ」


「紙?紙は水で解けちゃうよ?」


「こっちの世界の魔法でね。紙でもおむつが作れるようになってるんだ」


シオンの世界の魔法ってすごいなぁ。あたしには全然想像できないよぉ…。シオンの言うことは、時々難しい。けど、あたしがわからなそうにしてると、解り易く言いなおしてくれる。先生みたいにやさしい女の子。そういえば、シオンはもう学校は終わっちゃったんだっけ?


「シオンはもう学校終わったんだよね」


「ああ。一応先生…かな?」


「すごいなぁ…あたしも早く大人になりたいよぉ」


年は少しだけ上なのに、すごく大人っぽい。尊敬しちゃうなぁ。シオンは顔を赤くすると、そっぽを向いて、


「そんなことないよ…こんな体だし…」


と少しだけ、悲しそうに言った。その手がお股に伸びている。瞬間、ぬるとした感覚がお股に届いた。


「ひゅんっ!」


恥ずかしい声を出しちゃった。すごく顔が熱い。お股を押さえる。おもらしかと思ったけど、おしっこは全然出てこなかった。


「ごめん。びっくりさせちゃった?」


水晶越しに、シオンの心配する声が届いた。そうか、これ、シオンの感覚なんだ。あたしは首を軽く横に振った後、熱い顔を戻すのを忘れ、


「もうおしっこ出ちゃったのかなって、思っただけ」


と言ったの。その後もあたしは、その感覚に身悶えしちゃう。だって、おしっこ出してないのに濡れてる感覚なんて、今までなかったもん。足をもじもじと動かし、気を紛らわせようとする。


「…そうだ!」


「うわわっ」


突然の声に、びっくりしちゃった。目をぱちくりさせて、シオンを見る。シオンはすごく晴れやかな顔をして、


「ちょっと…待ってね」


と言って、水晶の見えないところに行っちゃった。途端に、不安になっちゃう。だって、置いてかれたのかと思っちゃったんだもん。


「あれ?シオン?どこいっちゃったの?」


がさごそという音が聞こえた。どうやら近くにいるみたいだ。あたしは水晶の前に座り、シオンが来るのを待つ。ぬるとした感覚が消えた。あたしはそれに気づきおむつを確認しようとして、


「んっ…!」


変なの。何だか、体が熱い。それに、すごく恥ずかしくて、気持ちいい。……変な感じ。まるで、エッチなことを男子に言われたみたい。しばらくして、シオンが戻ってきた。シオンは踏み台のようなものを水晶の前に置き、そこの上に立つ。シオンの顔が見えなくなって、代わりにシオンが穿いているおむつが、水晶の前に現れた。


「コロン?見える?」


シオンの声が、水晶の上から聞こえる。あたしはそれに合わせて、


「うん…見えるよ?…ってそれ、なに?」


と聞いた。ピンク色で、なんかパンツのような、それでいておむつのような、変なの。これが、シオンの世界のおむつなのかなぁ?


 シオンはあたしの言葉に返さず、ただそのおむつのようなパンツのようなわからないそれのお股の部分を、あえて触れるように押し付けた。


 その時、なんかわからない、音としたらごわわかな?……そんな感じの感触が、お股に届いた。


「ひゅんっ…何これ?不思議…」


思わず、声を出してしまう。お股に届くその感触は、今まで感じたことのないもので、あたしはその感覚を探ろうとお股を触ってしまう。


「これが、紙おむつだよ」


シオンの説明に、あたしは水晶と自身のお股の感覚を確認する。ピンク地の、かわいいイラストがついた、パンツなのかおむつなのかわからないもの。


「ふーん…これが、そうなんだぁ…」


あたしは未知のそれを、味わう様に感じていた。シオンがあたしのために、わざわざ用意してくれたんだもの。しっかり味わって、感じたいな。


 その時、急におしっこがしたくなった。途端に襲い掛かるそれは、あたしが思うよりも先に、体の外へ出てこようとしていた。


「あっ」


抑えようとして、お股を強く押さえる。けど、そんなのは、無意味なことだった。


しゅわぁぁぁぁぁぁ……


おしっこはすぐさまおむつの中へ放たれた。いつも通りの、温かいおしっこがお尻まで広がって、ふんわかした感じになる。だけど今日はそれに混じって、シオンの紙おむつにおしっこが吸収される感覚も、感じていた。どうやら、シオンもおもらししちゃったみたい。


「……ふぅ…でちゃったぁ」


体を震わせ、大きく息を吐きながら、おしっこの最後の一滴を絞り出した。そして、シオンから届く感覚が気になって、ついついお股を触ってしまう。それが功を奏したのかわからないけど、シオンの紙おむつの感覚が、一層強まった気がした。


「さっきと全然違う…ふよふよした感じ…それに…温かい」


その気持ちよさに、体を委ねた。誰もいない部屋の中で、あたしだけのその空間で、その感覚に浸り、安心していた。一人じゃない。そう思えたから。


 


このときのあたしは、シオンと出会ったことが招いた運命の行く末を、知る由もなかった。