兎なんかより寂しさで死ぬのは人だと思う。人は一人では生きていけない。常に家族を構成し、仲間を作り、そして絆を作る。
私もそんな、弱い存在の1人だった。
学会の発表も終わり、私はしばらくの間、仕事から解放されることになった。家に帰り、鍵をかける。
「ただいまー」
私の声は、家の壁へと吸い込まれ、消えた。
「…といっても、誰もいないか…」
無造作に靴を脱ぎ、リビングへと足を運ぶ。ハウスキーパーに頼んでおいたおかげか、久方ぶりの我が家には埃一つ落ちていなかった。生活感のない室内。使った形跡すらないソファに腰を沈め、天を仰いだ。この家は私が子供の頃に家族と住んでいた家だ。しかし、ここ4,5年はほとんどここにはいなかった。ソファの正面にある棚の上には、いくつかの写真が飾られている。
「…母さん」
そこには、亡き両親と写る、私の写真があった。両親は私が大学に入る前日、飛行機事故によって亡くなった。悲しかったし、大泣きしたけど、今は何とか割り切れている。これからは自分一人では生きていかなければならない。そう決意したのだから。
「…けど、無理だった…」
暗い室内。日が完全に落ちたようだ。部屋が一気に闇に包まれる。
「怖い…怖いよ…」
本当に、幼い子供のように、私は呟いた。大学に入って、1人で無理して頑張って、教授になって。どれだけ自身の功績が認められようと、私は孤独だった。周りの奇異の目。一人で生きようと頑張りすぎて、友達もいなかった日々。徐々に蓄積された思いは、彼女との出会いで爆発した。
「会いたいな…」
私はPCをつけ、ソフトを起動させる。彼女とつながれる唯一の方法。これが私の、救い。
「…シオン」
ディスプレイに映し出されたのは、鼻を赤くし、涙をこぼし続けるコロンの姿だった。
「どうしたんだいコロン…ひどい顔…」
コロンはディスプレイに覆いかぶさるように近づき、そして、
「シオン…シオンッ…会いたかったよぉ~…」
私の名前を何度も呼びながら、泣き始めた。途端に、彼女の感情が私になだれ込んでくる。まるで決壊したダムのようなその感情のうねりは、彼女に小さな体に収まっていたとは思えないほど大きく、激しかった。
「コロン…」
コロンが泣き止むのを待ち、私は彼女に語りかける。
「落ち着いて、コロン。あなたは1人じゃない」
コロンは首を傾げる。私は数秒ため込んで、その言葉を発した。
「私がいる。私はあなたを、1人にしない」
それは、初めての、告白だった。
「シオン…?」
コロンは私の顔をじっと見つめる。唐突なことで思考が停止しているようだった。私はそれをいいことに、あることを行う。
白状しよう。私もまた、寂しかったのだ。
私は自身の下半身を包むショートパンツを脱いだ。下にあるのは、久方ぶりの紙おむつだ。彼女と出会ってから、私はついにおもらし癖まで発症してしまった。けど、それもいいと思った。なぜなら、コロンとお揃いだからだ。
「…シオン…?」
コロンは私の感情に戸惑いを覚えているようだった。私はそんな彼女を好きで好きでたまらない。純粋で、可愛らしく、そして優しい。時に甘えたがりな、彼女を。
「コロン…緊張しなくていいよ…」
私は濡れたおむつの中に手を突っ込み、秘所をまさぐり始める。
「…んっ!?…シオ…ン…?」
彼女はその感覚に驚き、股を強く抑えた。私はそんな彼女のために、丁寧に自分の秘所を愛撫する。それは彼女へとなだれ込み、彼女の秘所を愛撫させることにつながった。
「何…これぇ…?」
きっと彼女はこんなことしたことはないのだろう。襲いかかる感覚に戸惑い、恐れ、そして身悶えた。
「怖い…怖いよ…やめてよ…シオンっ!?」
「…んっ!」
クリトリスを軽く摘まむ。彼女の体が大きく爆ぜた。私は普段しないようなにたりとした笑みを浮かべた。自身にこんなSっ気があるなんてびっくりした。私は責めるように愛撫を続ける。
「シオッ…だめ…わひゃひ…おかひくっ!なっひゃふっ……」
「安心しなさい。私が付いてひるから」
呂律が回らなくなってきた。快楽が強くなっていく。コロンは既に股を押さえるのを止め、されるがままになっていた。体を駆け巡る感覚に身悶えし、ぴくぴくと痙攣している。かわいい。犯したいほどに。
「おひっこっ!おもらひっ…しちゃ…」
「ひいわよ…一緒に…イキましょふ?」
「イ…ク…?」
彼女の疑問に、私は答えなかった。言葉では説明しづらいのなら、体で示すしかないだろう。そう考えたからだ。高まる快感。焦燥感。そして、体の奥底からくる尿意。全てが私をその瞬間へと導いた。
「あっ…アッ…あ゛っっーーーーーーーーーっ!!!」
「イッひゃうぅぅぅーーーーーっ!!」
同時に絶頂に達した。急速に力が抜け、そしてあそこからちびちびとおしっこが漏れ出し、すでに汚れたおむつへと落ちて行く。おむつはたやすく限界を超え、ギャザーの端から吸収しきれないおしっこをこぼしてしまっていた。ソファを汚すそれを、私は気にはならなかった。
無言。
お互い、何も喋らなかった。気持ちが落ち着くと、私は大きな罪悪感に苛まれた。自己嫌悪に陥り、頭を抱える。私は彼女の気持ちを考えず、ただ望むままに、彼女を犯したのだ。
「シオン…」
体が過激に反応する。私は恐る恐るディスプレイを見た。
「ありがと…」
そこには、満面の笑みを浮かべた、コロンの姿があった。
「私…初めてだったけど…とても、気持ちよかった…」
「そう…よかった…」
そして私たちは笑いあった。お互いの寂しさを忘れるために。
心の距離は、大分縮まっていた。そして、私も、コロンも、鎖のように離れられない関係となっていた。