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 4 また休日編

 

 土曜日、学園は休日になる。

 レイは物音で目を覚ました。

「あれ?ヒカリ。今日は早いね…」

 いつもは起こさないと起きないヒカリがもう起きて着替えていた。

「う、うん…。今日、夏美と出かけるの」

「そっか。楽しんできてね」

「……」

 レイは再び布団の中へ。しかし、

「おい、ヒカリ。夏美、また風邪で寝込んじゃったンだよ」

 ノックもせずにリクが飛び込んできた。

「え、そ、そうなの…。困ったなぁ…」

 ヒカリは少しだけ慌てている。

「ねえ。起きてよ、レイ」

「なに…」

「今日一日、私と付き合ってよ、ね」

「え?!」

 レイは飛び起きた。

「か、勘違いしないでよ。映画のチケットが勿体無いから、仕方なく誘うンだからね!」

 ヒカリの顔が少しだけ赤い。

(まったく…)

 だがレイは嬉しかった。

 

 

「二人とも出かけた」

 部屋に戻ったリクに同じ部屋の夏美が訪ねた。

「ああ。万事計画通り!」

 リクはピースサインをした。

 夏美はニヒ〜と笑う。

 風邪とは思えぬほど元気な姿で…。

 

 

 黄山学園から電車に乗って二駅に大きな街がある。

 大抵の児童は学園の近くで事足りるのでここまで来る者は少ない。

「ねえ、早く行こうよ。映画始まっちゃう」

 ヒカリはテンションを上げてレイの腕を引っ張る。

「ま、待ってよ」

 レイは息を切らしながら走った。

(そういえば小さい頃、よくこうやってヒカリが僕を引っ張ったっけ…)

 妙な懐かしさを感じながら、ヒカリに引かれ映画館を目指した。

「ねぇ。なんでそんな大きなバッグで来たの?」

 レイが指摘する通り、ヒカリはどう見ても旅行にでも行きそうな雰囲気なショルダーバッグを肩にかけていた。

「これは着替えが入ってるの!」

 なるほど。紙おむつが入っているのかとレイは思ったが少し妙だ。

 レイも紙おむつが入った小さなリュックを背負っているがそれほどかさ張るものではない。

「ほら、グズグズしない」

 ヒカリがレイを引っ張る力を強めた。

 

「あれ?これって前、テレビでやってなかった?」

 映画館の前に貼られたポスターを見てレイが言った。

「何言ってンのよ。これはパート2。この前テレビでやってたのはパート1」

 話題の中国歴史物だ。

 二人は映画館に入るとまずトイレに入った。

 いつの間にかおもらししていたからだ。

 新しいおむつを穿いた後、二人は座席に着いた。

 

 物語は次第に盛り上がりを見せ始めていた。

 壮大なアクションにレイは圧巻された。

 夢中で画面を見ているとふいにレイの手に温かみが感じられた。

 ヒカリがレイの手を握っていた。

 いきなりの事でレイの顔は真っ赤になってしまった。

 振り払うことも無く、映画が終わるまで二人は手を握り合っていた。

 映画の内容は頭に入らなかった。

 

 

「…」「…」

 映画館から出ても二人は無言で目的もなく街を歩いていた。

(ど、どうしよう…。こういう時って男の方から何か言った方がいいよね…)

 意を決してレイは口を開いた。

「あ、あの」「あのぉ」

 全くの同時だった。

「ヒ、ヒカリからいいよ」

「レ、レイが先でいいわよ」

「い、いや。僕は後でいいよ」

「何言ってンのよ。先に言いなさいよ」

 お互い押し合っていても仕方ないのでレイから言うことにした。

「こ、これからどうする?まだ帰るにはちょっと早いし…」

「ねえ、ちょっと行きたい所があるンだけどいいかな…」

「ん?別にいいけど…」

 ヒカリは頬を赤くしながらもレイの手を握る。

 レイも釣られて顔を赤くした。

 

 

「ここって公園…」

 ヒカリに連れられて来たのは高台にある公園だった。

 不思議と人気は少ない。

「いい景色でしょ」

 一望とまではいかないが街が綺麗に見えた。

「ほへぇ〜。けっこういい眺めだね」

「でしょ〜。さ、あっちでご飯食べよ」

「え?」

 レイの疑問を他所に、ヒカリは近くのベンチに座り、バッグを開けた。

 ヒカリがバッグの中から出したのはお弁当だった。

「それが入っていたのか…」

「そうよ。一生懸命作ったンだから感謝しなさい!」

 レイもベンチに座り、弁当箱を開けた。

「すごいじゃん。ヒカリって料理得意だったンだ」

 色鮮やかなオカズが敷き詰まっている。

「えへへ。実は調理クラブの皆から教わって作ったンだけどね」

 そう、彼女が放課後、用事と言っていたのは料理を習う為であった。

(つまみ食いしてるなんて思って、ごめんね、ヒカリ)

 レイは少しだけ後悔した。

「食べてよ」

「う、うん。いただきま〜す」

 レイは箸で卵焼きを一つ取って食べた。

「美味しい」

「ホント!良かった〜」

 ヒカリの顔が明るくなる。

 そらから二人は終始笑顔でお弁当を平らげた。

 

「あ〜。美味しかった。ありがとう、ヒカリ」

「そ、そりゃそうよ。私が一生懸命作ったンだから!それにホントは夏美と食べるはずだったのに、あの子、風邪だっていうから、仕方なくアンタにあげたンだからね」

 ヒカリは顔を赤くしながらシドロモドロで言った。

「じゃあ、帰ろうよ」

 レイが立ち上がると。

「ま、待って。もうちょっとだけここにいようよ」

「何で?」

「い、いいじゃない。た、たまには公園で一緒に遊ぶのもいいかなぁって」

「そうだね。昔みたいに遊ぼうか」

「そ、そうよ。ほら、レイ、行こう」

 ヒカリが立ち上がり、レイの手を引っ張った。

「ちょ、ちょっとヒカリ」

 有無を言わさずヒカリはレイを引きつれ遊具へと向かった。

 

 

 それから二人は時間を忘れて遊びまくった。

 気づいた時はもう夕暮れだった。

「あ、まずいよ、ヒカリ。早くしないと門限が」

「う、うん…」

 ヒカリはどこと無くぎこちなく答える。

「あ〜。それにおむつも替えないと。もうパンパンだよぉ…」

「そうだね…」

 レイのズボンも大きく膨らんでいて、ヒカリもスカートからおむつが見えている。

「早くトイレで替えようよ」

「ま、待って」

 ヒカリがレイの手を掴んで止める。

「どうしたの?ヒカリ。早くしないと…」

「う、うん…。あのね、その前に…」

 ヒカリは真剣な顔でレイを見つめる。

 西日が彼女の顔を赤く照らしている。

「…ヒカリ?」

「わ、私。レイのことが好き!大好き!だからその…。私でよかったら恋人になって下さい」

「え…!」

 いきなりの告白にレイは一瞬思考が止まった。

「駄目…かな…?」

 その一言にレイは我に返った。

「そ、そんなことない!僕もヒカリのこと…好きだから…」

「そうなンだ。良かった〜。私、どうしようかと思ったよ…」

 ヒカリは肩の力を抜いた。

 レイも今までの不満が消えて行くのを感じた。

 そして徐々に太陽が沈んでいった。

 二人はしばらく無言で夕日を眺めていた。

 しかし。

「あれ?今何時?」

「え?ま、まずい!門限に間に合わない!!」

「えええ!!」

 時刻はもうじき六時。門限も六時である。

「は、早く帰らないと!」

 ヒカリは急いでベンチに置きっぱなしになっていたバッグを背負い、リュックをレイに投げた。

「で、でもおむつ替えないと…」

「そんな時間はない!」

 ヒカリはそう投げ捨てるとレイの手を掴み走り出した。

 二人は急いで駅まで走り、電車に飛び乗り、学園の門まで戻ると時刻は六時二十分を指していた。

 当然二人は烈火の如く怒られた。

 

「うわ〜、危なかった。もうちょっとでゴムが切れそうだった…」

 ようやく開放されてトイレに入ったレイが今まで穿いていたおむつを見て言った。

(でも、今日は楽しかったな…)

 おむつを替えながらレイはそう思った。

 

 その頃。

「そっか、告白できたンだ」

 夏美とリクの部屋でヒカリが今日の成果を話していた。

 ヒカリは真っ赤な顔で頷く。

「やっぱり噂はホントだったンだね」

「あの公園の夕暮れ時に夕日を見ながら告白すると成功するなんて胡散臭いと思ってたけど。まあレイも元々ヒカリのこと好きだったみたいだし結果オーライじゃねぇ」

 夏美もリクも笑いながら言った。

「ふ、二人には感謝してる。その、ありがとう。色々と協力してくれて…」

 ヒカリがそう言うと夏美とリクはお互いを見つめてニィ〜と笑った。

 

 そう。今回の告白劇はすべて夏美とリクによって仕組まれていた。

 元々ヒカリが夏美に相談したことから始まったのだがこれほど上手くいくとは夏美もリクも思っていなかった。

 ヒカリが部屋に戻った後。

「良かったね。二人とも付き合えて」

「でもさぁ。いつもあんなに仲良いのに恋人になりたいなんて言ってきた時には正直驚いたよ」

「そうねぇ。私も、もう充分恋人同士じゃん。って思ってた」

「俺たちだけじゃないよ。学園の皆がそう思ってるぜ」

 二人はハハハと笑いあった。

 

 

 月曜日。

「うわああぁ。遅刻する!」

「遅くまでテレビ見てるのが悪いンだろ!」

「だって見たかったンだもん。“ポスト○ン”」

 通学路にはレイとヒカリの怒鳴り声が響いた。

「結局、ちっとも変わってないンだから…」

 二人を見ながら夏美が呆れ気味に言った。 終わり
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