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地下特有のジメとした感覚と、カビの匂いが気分を悪くさせる。今のような時代になる前から設立された、闇の研究所。正式名を高野谷特殊能力開発研究所。それがここの前身となった。公にはできない、非人道的な研究に明け暮れ、多くの人間を喰らってきた狂気の場所。

クェイドはその施設のある場所へと、足を運ぶ。彼はここの研究所で生まれた。彼の父親がここの研究所の所員で、母親が被験者だった。彼を産んだ後、母親は精神崩壊を起こした。どうやらいろいろと限界だったようだ。よって彼は、親の愛など知らなかった。

「……ここにくるのも1週間ぶりですね」

クェイドは独り、呟いた。彼の目の前にあるのは、この研究所のもっとも重要な施設の1つ、「収容所」と呼ばれている一角だった。ここはこの施設の実験の被験者たちを「飼育」する場所だった。もちろん、最低限の衣食住は提供される。しかし、それ以外はない。むしろ、監獄以上の場所だ。彼は実験の被験者ではなかったため、ここには入れられることはなかったものの、彼の母親はここで、死んだ。

この研究所は現在封鎖され、彼のような重要人物しか入ることは許されていない。一応、貴重なデータがるため、完全閉鎖はできないのが表向きの回答だが、実は違う。ここは今、クェイドの私物施設となっているのだ。そして、この「収容所」こそ、彼の「作品」が置かれる場所だ。その多くが失敗作で、殺処分でもよかったのだが、彼は敢えてここに残した。

全ては、彼の歪んだ口が証明していた。

「おはよう諸君。元気にしていたかな?」

生物特有の臭さが、鼻についた。収容所は3つのエリアに分かれる。最初のエリアは、開放式の大部屋。すでに半数のベッドがなくなったここに、クェイドの「作品」達がいた。

「おひゃよう…ございまふぅ…」

1人の「作品」が恍惚の表情で挨拶する。大きな、犬の耳をもった14歳ぐらいの少女。その少女は今、数匹の犬に犯されていた。1匹の犬が後ろから彼女の秘所にペニスをぶち込んだ。

「はぅっ…いきなりなん…ってぇ…」

少女は涙目になりながらも、笑顔だった。別の犬が彼女の性感帯となる場所を徹底的に舐めまわす。

「そ、そんな、らめっ…いくぅ…すぐにぃ…イッちゃうぅぅぅぅ!」

少女の体が痙攣を始めた。クェイドは穏やかな笑顔で一部始終観察した後、そのまま少女を放置し、先に進む。左右では、様々な、性行為が行われていた。異種姦、機械姦、同性プレイにSMプレイ…言い出したらきりがないほどのソドムの街。そこがこの大部屋エリア。クェイドはそこをスタスタと通り過ぎてしまう。まともな人間だったら、ここで発狂しているだろう。彼はそんな光景意にも介さず、次のエリアに向かう。

「さて、ここから先は私も気を引き締めなければ」

第2エリアへの扉は、3つの鍵で固く閉ざされていた。それを1つずつ丁寧に開錠していき、彼は先へと進んだ。

第2エリアは旧研究所で個室として設計されていた場所だ。主に暴走がちな被験者を閉じ込めるための独房であり、鍵が厳重に付けられた、重苦しいドアが並んでいる。そのドアの1つが突然、甲高い音をたてた。

「クェイド様……もう…」

1人の、人間の少女が、格子付きの窓から手を伸ばす。クェイドはその手を見るだけで、取ろうとはしない。その手が伸びていたのは、わずか数秒だった。

「いや、いやっ!いやぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

何かによって少女が独房の中に戻される。ここは、彼が使うパラサイトインベーダーの養殖場となっていた。つまり、あの少女は、生贄だった。また彼女は快楽の無間地獄へと、放り込まれる。クェイドはその、快楽の叫び声と、異星生物の蠢く音を聞きながら、さらに奥へ奥へと進んでいく。向かう場所はこの収容所の第3エリア。この研究所の最奥の地であり、同時に彼の秘密を封印した場所でもある。ぐちょりという音。陰液が地面を這う。1人では飽き足らず、2人3人と望む数を与えている。最も奥の独房には、ここでも最大級に成長した、パラサイトイベーダーがいる。そこには、すでに10人以上の少女を生贄として捧げた。

「いやぁ…いやなのぉ…」

「弄って…早くココォ…イジってよぉっ!」

「イひゅっ!イッてるのにぃ…またぁ…イッちゃうのぉっ!」

快楽にもだえる少女たちのカノン。クェイドは淡々とその中を歩く。無表情を装って、冷静を見繕って。

ただ、口が歪み笑うのは、制御できなかった。

 

クェイドは最後のエリア、第3エリアの前まで来た。最後は電子ロックで閉ざされた空間であり、上の制御コンピュータとは別の、独立したプログラムによって管理されていた。ドアの横には、指紋認証と網膜認証、及び声帯認証用の端末が備え付けられている。彼はその端末に近づき、一通り操作をした後、

「黒百合」

と発言する。機械はそれで声を判断し、ドアが開いた。分厚い、複雑な機能を備えた金属製のドア。静かに開いたそれは、この世とあの世を分ける地獄門のようだった。

クェイドはその門の先へと足を踏み入れる。第3エリア。それは最高級被験者のためだけに用意された「牢獄」だ。成功例として、失敗例として、サンプリングする必要のある希少種を保存する場所。それがこの第3エリアだ。さらに第3エリアは、主に死にかけの希少種を保護、保存する「フラスコ」と呼ばれる超強化ガラス張りのエリアと、暴れてしまうため、先ほどの第2エリアでは制御できない品種を保存する「牢獄」と呼ばれる生体型捕縛システム、「玉」があるエリアと、そして、超希少種を保護観察する「ホスピタル」と呼ばれる絶対監視、観察システム制御の部屋があるエリアの3つに細分化される。

しかし、そのうちの2つは、すでに誰も出入りしていない。「フラスコ」は興味がないためほぼ手をつけていないし、「牢獄」はその「玉」の死滅により使用不能となっている。よって、彼が向かうのは最後の「ホスピタル」である。

「さて、ただいま…とでも言うべきかな」

ここはかつて、彼の母親がいた場所でもある。彼の母親はとても貴重な希少種だった。世界でも有数の、「超能力」が使えるとされた人物だったのだ。しかし、彼を産んで以降は不調で、最終的には自殺した。彼はそれについては何も思ってなどいない。なぜなら、彼女の力を奪ったのは、自分だからだ。

そう、クェイドは「超能力」が使える。

「超能力」といっても、テレポーテーションやサイコキネシスが使えるわけではない。彼が持つ「超能力」或いは「特殊能力」は、「誰からも愛される」という能力だ。もともと、彼の母親が所持していたが、彼を出産時に少しばかり移った。最初はほんの少しの能力だったが、徐々に母親の能力を吸収し、最終的に彼女を無能力化させてしまったのだ。以後、彼はこの能力を隠しつつ、巧みに使い、今の地位を築いた。

「クェイドォッ!」

ガラス越しに届く、少女の怒りの声。「ホスピタル」の内部にいる個体は、たった1つ。かつて師と仰いだ沖田博士の「作品」を模倣し、作り上げた個体。それは同時に、彼の屈辱の証でもあった。

「そういきり立っても無駄ですよ。ラピス」

バサバサという音。それは、彼女の背中から生えた漆黒の翼が、大きくはためいた音だった。

「貴様ぁ…んっ!」

堕天使少女、ラピスラズリの顔が紅潮した。カシャカシャと鎖の動く音が響く。両の腕を頭の上で交差した状態で拘束され、足はアヒル座りの状態で枷をつけられ、ほぼ固定された状態になっていた。それでも彼女は抵抗し、体をよじらせる。まるで、何かから逃れたくてたまらない、といった感じだ。

「素直じゃないですねぇ。あなたも」

クェイドは遠回りして、彼女のいる部屋に立ち入った。ラピスラズリの表情が憎悪に満ちたものに変わる。

「クェイドォォォォォォォッ!!!」

金切り声をあげながら、激しく暴れるラピスラズリ。名前のとおりの瑠璃色の長髪を揺らし、秀麗なクランベリー色の瞳は、憎悪のあまり獣のように尖っていた。西洋に描かれた天使のように美しい肌。その肌に傷を作ってでも、彼女は暴れまわる。

「ハァァァァァァァッッ!!!!」

咆哮。彼女は背中の翼を最大限に広げ、口を引き裂かんとばかりに大きく開け、獣のように咆哮した。

瞬間、レーザー光線が放たれた。それはクェイドの横ぎりぎりを通過し、ドアに当たり終息する。この部屋は彼女を収容する際に改修し、彼女の攻撃にも耐えられる強度を誇った材質で構成されている。

「本気では…ないのですね。やはり、まだまだ君は甘いです」

眼鏡をクイと動かし、断言する。ラピスラズリの顔に、先ほどとは違う、焦りのようなものが見えた。

「さて、今日も、あなたの様子を私直々に確認しましょう」

クェイドは、意識して、彼女を、見た。

「超能力」が発言する。

「あ、ああ…ああっ……」

ラピスの気迫が一気に減衰した。わなわなと体を震わせ、殺意が消滅していく。代わりに生まれたのは、愛情だった。

「クェイド様ぁ…」

甘美な声に、クェイドはにやりと笑った。

「なんだい?ラピス」

極めて穏やかな、まるで恋人に囁くような声。ラピスは顔を緩ませ、

「おむつ…換えてください」

と上目遣いで懇願する。彼女が身に纏っている服は、実に簡素だった。背中が大きく切り開かれたシャツ。そして、オレンジ色の、無地のおむつカバー。

「わかった。じゃあ、おむつを換えよう」

クェイドは部屋の隅にあらかじめ置かれている替えのおむつをラピスのところまで持ってくる。ラピスは早く換えて欲しくてうずうずしていた。しかし、クェイドはそこで手を止めた。

「は、早くぅ…クェイド様ぁ…っ」

舌足らずの甘え声。顔を紅潮させ、気持ちよさげに、ラピスは自身の本心とは裏腹の行動をとり続ける。クェイドは1度離れ、彼女の鎖を、遠隔装置により外した。自由を得た彼女だが、逃げようとはしない、むしろ、クェイドにいろいろとしてシてもらいたいから、彼をその場で待ち続ける。クェイドは総てを理解した上で、優しく彼女に言う。

「先に、私のミルクを飲んでからだよ?ラピス」

クェイドはベルトを緩め、パンツを下し、自身のペニスを露出させた。怒張し、血走ったそれを見て、ラピスは目をとろんとさせた。本来の、大きな丸い目に戻った彼女は、そのペニスにむしゃぶりつく。

「みふくっ!ほふぃよぉ…」

頬張りながら甘えるラピスを、クェイドは優しく撫でてあげた。それだけで、彼女のオルガズムは加速する。飴をなめる子供のような表情だが、フェラチオは上手かった。それを調教したのもクェイドだ。まずは彼と彼女の行為は、これから始まる。

「出すよ…味わってね」

口でそう言った数秒後、クェイドは1回目の射精をする。ラピスの口の中で爆ぜたそれは、口を充満させ、彼女を呼吸困難に陥りさせる。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

それでも、彼女は飲みほす。しかし、それでも限界があり、口から精液を涎とともに零してしまっていた。

さながらその光景は、ミルクを飲む赤ん坊のようだった。

「おいふぃ…きもふぃいぃっ!」

口を精液まみれにしながら、ラピスは喜びの声を上げる。同時に、下のほうから、水の流れる音がした。

ラピスは絶頂とともに、おもらしをした音だった。オムツはもうおしっこを吸いきれないのか、裾からじわじわとおしっこを漏らしていた。ぐしゅりという音。水にぬれた淫靡な音。

「あ、あーっ!おしっこ出ちゃいましたぁ…クェイド様ぁ!」

喜びながら泣くラピス。彼女の脳は今、愛情と快楽に支配されていた。

「イケナイ子だね。ラピスは…でもそんなラピスも、私は好きだよ?」

クェイドは額にキスをすると、おむつカバーのマジックテープをはがす。ビリリという音の後、彼の手により、彼女のおむつの中が露となった。

それはスコールの後の大地だった。オムツおしっこと蜜、潮でぐしょぐしょに汚れ、濃厚なミックスジュース状態となっていた。

「あっ…あんっ…」

見られるだけで、ラピスは蜜を漏らす。同時に、違う液体が漏れてきた。それは、先程まで彼女を快楽の底へ陥れようとした存在の体液だった。

「おはようございます。『クイーン』」

クェイドの挨拶にそれは直接脳に語りかけて答えた。

―――うむ。そなたのおかげで我はお腹いっぱいになれた。しかし、当分の備蓄も兼ね、まだ続けて欲しいぞよ?

パラサイトインベーダーは文字通り、寄生虫に準えて名づけられたが、もう一つ、彼らに虫のような特殊性がある。それは、女王制の存在だ。彼らは基本単為生殖であり、オリジナルから幾度となく分裂して増殖する。しかし、ある一定数になるとこれが止み、オリジナルは女王種として覚醒する。

女王種は人間と同等の知性を持ち、さらにテレパシーも使える。それ以上のことはいまだ研究中の部門が多いが、判明していることとして、

1.女王種といっても、パラサイトインベーダーであるため、長時間外界にいることはできない。

2.女王種が死亡した際は他の下位種も同時に死滅する。しかし、下位種が死滅した場合、女王種はまた分裂し、下位種を増やすことができる。

3.女王種に寄生された母体は、女王種と同程度の能力を身につけることができる。しかし、精神レベルが低い場合、女王種に意識を乗っ取られる可能性がある。

4.女王種は可能な限り母体に干渉しない。しかし、母体が暴走した場合は、その限りではない。

の4つがある。クェイドはこの失敗作が誕生した時、真っ先にパラサイトインベーダーを寄生させ、ここに閉じ込めた。以後、彼女はここでパラサイトインベーダーの増殖用の苗床として成長し、やがて女王種の保存母体として活用されているのだ。

「仰せのままに」

クェイドはまずラピスの秘所を愛撫し始める。ラピスは喘ぎ声を出し、息を荒くし始める。と同時に、クェイドのペニスがまた怒張し始めた。

「だ、だめれすぅ…わたひ…頭が…おかひく…なっひゃうっ!」

快楽に溺れ、呂律も回せず、ラピスは己が身を震わせる。全ては体が求めていたことだ。パラサイトインベーダーに長く寄生され続けた彼女の体は、性感度が激しく上昇していた。軽く愛撫しただけで、頭の中を電気が迸る。星が空を飛び交い、景色が一巡した。

「いっひゃうっ!いっひゃってらめになっひゃうっ!」

もう何を言っているのか、わからなかった。彼女は潮を吹き、絶頂を迎えた。しかし、クェイドは休ませたりなどしない。痙攣するラピスを抱きかかえると、彼女の秘所に、自身のペニスをあてがい、挿入させた。

「ひゃんっ!」

突然の行為に、大きく仰け反るラピス。体を突きぬける快感。舌を出し、涎を撒き散らしながら、彼女は叫ぶ。

「ひいよぉ…気持ひ…いひよぉっ…!」

快楽に、理性が負けた瞬間だった。

クェイドはピストン運動で、彼女の精神を壊していく。彼女は今や、体中を快楽の受け皿にし、すべての行動を快楽へと変換させていた。

「あ、ああっ…くるよぉ…」

喘ぎ声の中で、彼女は言った。クェイドはそれに合わせ、行為の激しさを増させた。

「らめっ…こわれひゃうっ!あたひっ!こわれひゃうよぉっ!」

悲鳴を上げても、顔は笑顔のまま。むしろ恍惚に身悶え、すぐにでもイッてしまいそうな

顔。

「いいよ。ラピスの好きにするといい」

クェイドの優しい声。口元を歪め、笑っていない目。彼の心は、ここにはなかった。

「うん…気持ひ良く…なりたいのぉ……」

「そうか…なら…」

クライマックス。オルガズムは最高潮に達し、お互い荒い息を吐きながら、絶頂を迎えようとしていた。

―――さあ、私に新しい供物を持ってきておくれ…

中にいる女王種が語りかける。それが、引き金だった。

「……ううっ!」

「ああんっっ!」

同時に絶頂を迎え、クェイドはラピスの膣内に射精した。量が多いのか、結合部からごぼぼと精液が漏れているのが見える。白目をむき、快楽の底へ溺れたラピスは、そのまま脱力した。と同時に、あるものが漏れた。

それは、おしっこだった。

絶頂失禁。脱力によって漏れた尿は、精液と混ざり、まだ変えていなかったおむつに落ちた。クェイドは静かに彼女の膣からペニスを抜き、服を整える。彼女のお漏らしは、そのあと1分は続いた。そのまま彼女は失神する。それを見届けると、クェイドは手早く彼女の体を拭き、新しいオムツをつける。カバーも一新し、水色の無地のおむつカバーに包まれ、充足した寝顔を見せるラピス。

―――では、また

女王種が別れの挨拶をする。しかし、クェイドはなにも返さなかった。彼女を元の通りに拘束し直し、「ホスピタル」を出る。

「さて、次はアトラシアですね」

眼鏡をクイと動かし、これからのことを再確認する。彼女しばし眠るだろう、そして目覚めた時には、また憎悪の炎を燃やすのだ。それが、今の彼女生活すべてだった。そうして自我を保ち、彼女はここにつながれ続ける。永遠の生贄。それが彼女の役割だ。失敗策として誕生したラピスには、何ら能力は備わっていなかった。あのレーザー光線は、後天的に獲得したものだ。不老不死でもない彼女を永遠とさせているのは、ほかならぬ女王種だった。寄生種の力をもってして、母体はようやく完成体に近づけたのだ。

「ふふっ…私もつまらぬ感情とやらを持ち合わせているようですね…」

歩きながらクェイドは独り言をいった。口元を大きく歪め、ピエロのように笑いながら、彼はソドムの街を歩き続ける。

「こんな無様な存在に憐れみを感じるとは…」

すべては彼が作ったこと。この快楽地獄は、彼の趣味そのものだった。そして、

「では、あの子にも快楽を…」

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