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彼女は真っ白の部屋で目覚めた。彼女の住まう場所はここ。何も飾り気のない真っ白な部屋。真っ白な壁紙。真っ白な天井。真っ白な床。真っ白なベッド。真っ白なシーツ。彼女の着ている服も真っ白なワンピースだ。色があるのは彼女の肌と眼と髪、耳だ。

肌は傷ひとつない珠のような肌で、色は肌色が薄まったような色。大きな半月型の眼は、夕焼けのようなオレンジ色。髪は紫陽花の花のような青紫。そして、人ではないことを表す猫の耳は、曇り空のような灰色だ。年齢にして11歳。少女はベッドから床に降り立つ。首には、赤い首輪が着けれられていた。それは彼女が自由でない証拠。首輪には「athlusia」と書かれたドッグタグが着けられていた。

外に出ると彼女の首輪に鎖がつけられる。これで彼女は逃げられない。両手にはリング。いざというときには手錠となる。白衣を着た、眼鏡を掛けた男性2人に付き添われ、彼女はB132と書かれた部屋の前まで連れて行かれた。そこまで交わされた会話は1つもなし。彼女は従われるままに部屋に入る。こちらは全て灰色。カーペット敷きの部屋。天井には蛍光灯が規則正しく並べられ、四隅にはスピーカーが設けられている。右壁はマジックミラーとなっており、右側の部屋からはこちらの様子は筒抜けだ。そして、大きなダブルベッドの上に、得体の知れないもの。

それはゼリーを空中に保ったようなフォルム。透明なゼリーが、ベッドの上にいた。

「アトラシア。わかっていますね」

スピーカー越しから声。彼女はその声の主をよく知っている。彼の声は彼女に強制的な刷り込みを与えた。

「はい。調整ですね。クェイド様」

彼女は自らが着ている衣服を脱ぎ始める。ワンピースの下には、ピンク色のおむつカバー。彼女はその時点で恍惚の表情を浮かべていた。部屋には高感度のマイクが各所に取り付けられ、そこには水が流れる音がしっかり録音されていた。

「でちゃいましたぁ。クェイド様ぁ」

声は甘く、淫靡な響きを醸し出す。スピーカーの向こうで、くつくつという笑い。そのあと、優しい声で彼女に語りかける。

「処理が終わってから、ちゃんと換えてあげますね。アトラシア。始めなさい」

「わかりましたぁ」

おむつを脱ぎ、彼女はベッドに躍り出る。ゼリーはもぞりと動き出し、彼女の秘所を探し始める。彼女は自らゼリーに秘所を差し出した。

クェイドがいる部屋は機材が満ち溢れていた。アトラシアは知らないことだが、ベッドやさまざまな場所に、たくさんのセンサーが設けられ、彼女たちの様子や、知らない体内のことも逐一報告する。

「アトラシア。調整開始しました」

女性のオペレーターは無機質な声で言った。彼女はこの行為を見ても何も感じていないようだ。対して、右隣の女性は、自慰に浸っている。こちらの女性もまた、このゼリーに陵辱され、壊された少女だ。こうして、簡単に自慰を始めてしまう。彼女をゼリーに与えたのもクェイドである。クェイドは近代宇宙生物学者であり、遺伝子工学専門者だ。ここまでゼリーと呼んでいる生命体の正式名称は、パラサイトインベーダー・リコンバイナントという。数十年前、サハラ砂漠に墜落した隕石に付着していた虫状の生物が起源で、これはそれを地球の技術で再構成したものだ。

彼らの分泌する粘液には、触れた生命体のアポトーシスを抑制させる効果があり、一時的な不老不死状態となる。起源であるパラサイトインベーダーは主に人間の女性に寄生し、彼らに快楽を与え、その際に生じる内分泌液を栄養にして成長する。対価として与えるのは不老不死。これも、安定した栄養確保のためである。

彼らは人の精神を壊してまで、搾取し続け、ある程度成長すると宿主とは別の女性に卵を産みつけ、自分は休眠につく。卵を産みつけられた女性は、その後激しい快楽と出産により精神が崩壊する。宿主は、快楽を求め男性と行為を繰り返し、やがて人の子供を孕む。この子供は必ず女になる。そして自らはこの子供に寄生し、休眠から覚め、不老不死にしてから快楽を与え搾取する繰り返しのプロセスを歩む。彼らの弱点は寒さ。故に寒い地域には生息せず、自然と生息域は温帯から熱帯にかけてとなる。

これに対し、パラサイトインベーダー・リコンバイナントは生存のための本能を持たず、寄生もしないまま、こうして存在できるように改良されている。それを可能にしたのが、彼らがゼリーと呼ばれる所以でもある、構成材プロンプトである。彼らの細胞にこれを組み込むことで、彼らはゼリーのような体となり、単体での外部干渉に対する防御能力も増した。こうして、自己のみで存在できるようになったのである。

クェイドは最初からこのことに目をつけていた。そのため、進んで素材を提供、こうして実験を繰り返している。彼女を作ったのも彼だ。アンチヒューマノイド。それがアトラシアのような子供たちを呼ぶ呼称である。

アンチヒューマノイドとは、人間が作り出した人間に「極めて近く、限りなく遠い」生命体だ。自らの進化のために、神の真似事をしたのである。世界は数年前の大振動(グランデ・エア)によって大打撃を受け、100億を誇った人口の8割を喪失した。さらに、男性人口は減り、現在男性:女性比は1:9である。これは、男性が変化に対応できずに多くが死滅してしまったからである。

こうした世界の中で、人間の新たな道は模索された。その過程で、彼らは生まれた。人間という種の存続のために、強制進化を行うという生物学者の先鋭的集団から始まったこの実験は、いまや世界中の生物学者の大半が行うようになった。タブーなどとうに消え、スタンダードとまでなってしまったのである。

彼らは完璧な人を作ろうとした。この世界でも平然と生きられる生命体としての人を。やがてそれは、人間のあるべき姿への原点回帰へと繋がった。純粋無垢。不老不死。限界知能。神様が持つファクターを取り入れられ、いくつも作られた試験体。

そうして、数年前ここ高野谷次世代型人間育成開発所で、2人の完成体が誕生した。製作者の名前は沖田 修二。クェイドの師であり、世界的に有名な生物学者でもあり、優れた遺伝子工学者でもあった。彼が生み出したのは双子の少女。片方は天使に、片方は悪魔に似た姿をし、上の全てのファクターを持った完璧な存在。彼女らは『双翼の理想』と呼ばれた。

世界の科学者の多くが「これで実験も終了か」と言うほど、完璧だった。彼女達の完成により、このタブーを超えた実験合戦にも終止符が打たれると思われた。が、後に沖田事件と呼ばれる事件が起きる。開発者である沖田博士が、実験に使ったデータ、試作品、そして完成体である『双翼の理想』まで持ち去って失踪したのだ。これにより、彼女らが作られた過程や、製造方法は消失し、実験は振り出しに戻ったのだ。

そして、今度はこの『双翼の理想』に関わった人々が世界に重宝されることとなった。断片的であれ、その情報は高値で取引された。世界では『双翼の理想』のレストアモデルやコピーモデルが作られるようになるも、どれもが失敗作だった。

クェイドもまた、引く手数多になった原因はこの沖田事件である。が、彼は元々沖田博士とは対立的思考の持ち主だった。彼の求めるのは因子開放である。因子とは、全ての生き物に共通する、「こうあるべきもの」という絶対命令のことだ。例えば犬と馬で子供を作ることはできない。これは構成遺伝子や配列が違うというのが大筋の考えだが、クェイドはこう考えた。

そもそも、生き物にはどんな生まれになるかが決まっている。遺伝子という設計図に元から書き込まれたもの。人間という因子を持つ限り、それは人間として生まれ、犬という因子を持つ限り、それは犬として生まれる。これを人は絶対運命と呼ぶ。ならば、この運命を超過させることができればどうなるのか。生き物としての設計図さえ超え、作られた生命体は因子に支配されない。つまり、なんにでも成れる。どんな環境に対応できるのならば、この世を支配するのはふさわしくないだろうか?

こうして彼はその名声を利用し、情報を売り、金を集め、この研究所の高い地位を取った。彼が求める因子開放は、一から作る場合と、途中で壊す場合と2つの方法が考えられる。前者はアトラシア。後者はそこのオペレーターだ。彼女らが交尾させられたパラサイトインベーダー・リコンバイナントは、この因子を薄れさせることができるよう改良された。

結果は見ての通り。前者はただいま実験中だが、後者は失敗に終わり、ただの官能人形に成り果ててしまった。が、通常時はまだ一般人と大差ないため、こうして雑用を任されている。

「アトラシア。子宮内部にリコンバイナント挿入」

オペレーターは無感動に報告する。このオペレーターもどうかしてるのだろう。普通の人間がこんなことをしてたら壊れるだろうから。と、クェイドは思った。

『あっ…もっと…入って…くるのぉ…?』

マイク越しにアトラシアの官能の声が聞こえた。それを見るクェイドはオペレーターと同じように無感動だった。

哂っているように歪んでいる口元を除いて。

調整は、2時間にも及んだ。その後、失神したアトラシアは研究員に運ばれ、いつもの居場所、真っ白な部屋のバッドの上に寝かされ、着替えさせられた。水色のおむつカバーに白いワイシャツ。彼女はそのまま眠る。その寝顔が朱に染まる。彼女の中にはまだ、リコンバインメントの粘液であり、媚薬効果も高い液体が残っていた。それが、新しいおむつと当たる秘所に快感を与え、そしてイクと同時におしっこを漏らす。寝ているのだからおねしょということになるのだろう。

辛そうに。嬉しそうに。気持ちよさそうに。苦しそうに。そんな風に取れる表情はやがて、官能の恍惚へと。そうして、快感を反芻しながら、彼女は過去を夢に見る。生まれたばかりは、何も分からずに博士に抵抗したばかりだった。初めての調整では快感より痛さのほうが強かった気がする。最初はいやいや調整を受けていたが、それが快感に変わると調整が楽しみだった。調整の残りでこうして体が気持ちよくなるのは大好き。なにより、こんなことを教えてくれたクェイド様のことが…。

彼女はまた深い眠りについた。

彼女が目覚めたのはそこから6時間後のことだった。それから先は彼女の自由時間だが、制限があり、この部屋から出ることはできない。自慰も禁止されている。自慰しそうものなら、両手のリングは手錠となり、身動きできなくなったあと筋弛緩剤を打ち込まれる。そうしていっぱいおもらしすると、今度は変えてくれる人がやってこなくなって、しばらく汚れたおむつで放置されてしまうのだ。彼女は1度これを経験して以来、自慰はしなくなっている。

「なにしようかな」

アトラシアはベッドから降りると、すぐに自分のおむつが重たくなっていることに気づく。その状態でドアまで近づき、青いボタンを押した。数分後、先ほどのオペレーターがやってくる。アトラシアは彼女のことをおむつ換えしてくれるおねーちゃんとしか認識していないが。

「では、おむつ換えますね」

「うん…」

オペレーターはゆっくりとマジックテープをはがし、それから前あてを開く。中はいろんな意味で大洪水だった。ぐっしょりとねばねば。2つが織り成すその光景はひどく淫靡に感じる。中を見るアトラシアはなぜか嬉しそうだ。それからおむつをはずし、丁寧に秘所を拭く。その度に甘い嬌声を上げ、どろりとした液体を秘所から出すアトラシア。それをオペレーターは何も言わず拭き取る。その後、新しいおむつを挿入する。

「あ、あの、これって…」

見慣れないおむつにアトラシアが質問した。オペレーターは事務的に返す。

「紙おむつ。それもアンチヒューマノイド用でございます」

それから手早く紙おむつを履かせ、オペレーターは立ち去る。また、アトラシアは1人になった。

穿きなれないためか、しきりにおむつを気にしている。が、変な行動を取ればすぐに手錠が作動してしまうため、その感覚を受け入れるしかない。少しごわごわした感触が秘所から伝わる。感じそうになるのを我慢する。少しだけ蜜が漏れた。

「…んっ…」

それだけでも十分だ。アトラシアはその快楽に浸りつつ、食事と「ごほうび」が来るまで待ち続ける。

クェイドはある場所へと足を運ぶ。地下深く、研究所の前身となった場所へと向かう。そこの入り口には、高度なセキュリティが備えられている。

「ID:20983467 クェイド=ヘルシウス CODE:×××××××××」

事務的に言った言葉をコンピューターが読み取り、音声認識プログラムに掛ける。

「CODE認定。セキュリティ解除します」

コンピューターから女性の声が返ってきた。この施設を管理するAI:ホワイトアプリコットの声だ。この施設の創始者が作り出したオーバーテクノロジー。現代でも完全ではない人格搭載型AIの完成タイプ。どんな攻撃にも屈しない電子の魔女。鉄壁の乙女。

扉が開いた。

その先にある長い廊下。彼は慣れた足取りで歩き出す。

扉の上には、第1種隔離エリアとだけ、書かれていた。

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