ルームランプのかすかな明かりが、子供部屋を薄オレンジ色に染めている。
時計の針は頂点を過ぎて、子供はもうおやすみの時間だ。
寝静まったこの家に音はただ一つ、狐耳の少年が漏らす吐息のリズムだけだった。
穏やかな寝息ではない。
暑さに動物が舌を出すような、乱れた呼吸。
その主はベッドの上で仰向けになり、寝巻きをはだけながら体を火照らせていた。
身につけたピンク色の水玉模様のパジャマは、昼間のスカート姿と同じく少年の姿を可愛らしく飾り立てていただろう。
ただ、肌を露出させて息を荒げる今の姿は、可愛らしい女児の姿以上に見る者の欲を煽り立てる雌に成り変わっている。
大きな三角形の狐耳は伏せがちになり、汗に濡れた長髪は乱れてベッドに広がる。
ボタンを全て外されたパジャマは柔らかいお腹を包み隠せずに、小さなへその下でテープを留められた紙おむつが暴き出されていた。
「どう……しよう。お母さぁん……」
少女が泣いているような、か細いその声への応えは無い。
少女のような少年の白くて細い指先は、紙おむつとお腹の隙間に滑り込んでいる。
近くで観察する目があれば、それはきっと紙おむつの前当てが持ち上がり、山のような膨らみを作っている事に気づいただろう。
充血した幼い陰茎は、華奢なその体に似合わない膨張を遂げていた。
竿に絡みつく指が必死に擦る度に、彼の狐耳がぴくりと揺れ動く。
しかしそれは彼にわずかな快感しかもたらさない。
ここ数日で初めて勃起を経験した彼は、まだ自らを慰める術を持ってはいなかった。
おむつを交換してくれる母親の手だけが、今まで少年の興奮を鎮めていた。
「ゃあっ…!もう、ダメぇ……」
漏れる声は快感に耐えかねての声ではない。
少年が耐えようと、下半身に力を込めるたびに陰茎はさらにおむつを持ち上げた。
「あっ」
シャァァァァ……
震える狐耳が捉えた音は、彼自身の失敗を示していた。
膨張しきった陰茎から勢いよく飛び出したおしっこは、自身がおむつを持ち上げた隙間から飛び出してお腹の柔らかな肌に衝突する。
しぶきが上がり、流れ出したおしっこはパジャマとシーツを濡らしていく。
慌てて手を竿にかぶせるように防ごうとしたが、勢いのついたおしっこはもうほとんど出してしまった後だった。
呆然とした時間も刹那。
役目を果たせずにテープが取れた紙おむつに、おしっこまみれのパジャマを纏った女装少年は、元凶の陰茎がすっかり縮まっているのに気がついた。
「あ、洗わないと。ね……」
まだ意識もはっきりしないまま、少年は立ち上がる。
滴るおしっこがフローリングに跳ねる音だけが、薄暗い部屋に響いていた。
ふと、昼間に聞いた母の声を思い出す。
(鳴俊、これから学校でもこうなっちゃうかも知れないから、その時は今したみたいな事してやってくれる?)
その言葉をかけられたのは、親友の芳也だ。
鳴俊の母親、各務紀子はバウンティーハンターである。
芳也の父とコンビで仕事をしている彼女は、やはり今夜仕事に出かけていた。
(頼めるのは……芳也くんしか、いないかな)
鳴俊の脳裏に、親友が陰茎を摩る姿が一瞬思い浮かぶ。
鳴俊が自分の陰茎がまた膨張している事に気づいたのは、先ほどテープが剥がれ掛けた紙おむつが床に落ちた時だった。