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   時を感じさせない、いや、時を止まらせたような場所だと、シータは感じた。積み上げられた本は、全て彼の文字で埋めつくされているのだろう。山になった本の一番上から1冊手にとる。1冊取っただけでぐらついた。瞬間、息を呑む。…大丈夫、倒れない。本をとるのにこんなに神経を使うのは初めてだ。外は付箋でデコボコしていた。開くと案の定、本は書き込みでびっしりだった。

「シータ。あんまり散らかさないでくれ。それとも君は、僕の邪魔をしに来たのか?」

本の山の奥から、声がした。シータはそっと本を元の場所に戻し、声の主の元に向かう。

「今日は“反転”魔術の高度応用で異界召喚を行おう」

本の山の中から、少し小柄な少年が出てきた。名をユイーシュ。自らよりも若い姿をしているが、実年齢は5倍以上あるという、人外だ。彼はこの図書館の管理と、魔術研究を担当している。組織の中での意思決定に権力を持つ6賢人の1人。くせっ毛気味の栗毛をいじりながら、緑色の双眸を走らせる。手に持つ本の題名は“同時存在可能世界の可能性”という一般人が見たら眉唾な話の本。しかし、魔術士には重要な本だった。

「やっぱりこの方法で無いとダメみたいだな…よし、準備に取りかかろう。シータ。ここに書いてあるもの、用意してくれない?」

ユイーシュは顔を上げずにシータに指示を出す。シータはそれを拒むことなく従った。ユイーシュはその様子を確認もせず、既に自動書記魔術でメモを書いていた。彼は魔術は学ぶものではなく、使うものとする流派のため、率先して魔術を使いたがる。それは自分ができる普通のことに対してでも。書きあがったメモを渡されたシータはすぐさま準備しようと図書館を出ようとして、

「そうだ」

と言う声に呼び止められた。振り向くと、ユイーシュは珍しくシータに顔を向け、言った。

「例の観測についての調査と原因の捕獲、もう済んだの?」

「いえ。あの子達からはそのような連絡は、何も」

シータは包み隠さず話した。ユイーシュは少し不思議そうに返す。

「そうなの?てっきりカルナが向かったからそういう報告があったのかな、と」

「カルナのアレは、勘でしょう。それよりも、こちらのことを行いますから」

シータが話を切り、この会話は終了した。図書室を出ると、そこには意外な人物がいた。

「ユイーシュに何の用です?ルーン」

紅色のツインテールにあどけなさが残る顔。黄色い瞳は、魔術使用の影響だ。独特の着こなし方をしたドレス。この城のガードであり、6賢人の1人である彼女がここにいるのは珍しい。

「用があるのはあんただよ。シータ。あたいはあんたを待っていたんだ」

その言葉に少しの驚きを感じた。あまり他人に興味を持たない彼女が自ら出向くとは、いかようなる用なのだろうと、シータは思った。ルーンはシータに近づき、シータにしか聞こえない声で、言った。

「門の前に、誰かいる。そいつは、あたいらより、絶対ヤバイ」

ルーンの言葉を受け、シータは熟考する。おそらく迎撃するべきかどうかを聞きに来たのだろう。数秒ほど考えて、シータは発言した。

「とにかく、門の前まで行ってみようか」

2人は門へと向かった。時刻は、午前3時を廻ろうとしていた。


参道とお堂。原生林を抜けた先にあったのは、それだった。先に入ったはずのほのかの姿が消え、仕方なく原生林を真っ直ぐ進むと、着いた先がここだった。先に着いていたと思ういなり、真琴、夕子が僕を出迎える。彼女達はここについてからあまり動いていないらしい。落ち着いた様子だった。逆に僕はここまで原生林に足を取られたりしたためか、歩き疲れていた。守人とたま、白梅はいない。どうやらお互い分かれてほのかを探すうちに、ここに着いた人物は足を止めたみたいだ。僕は木を背に座り込む。

「かおる。大丈夫かの?」

いなりの言葉がありがたい。すると、夕子がハンカチを差し出してきた。僕は自分のがあると断ったが、夕子はそれを差し出した手を戻さない。

「使って。私は後2つ持ってるから」

何か突っ込みたい気持ちに駆られたが、疲れてるから突っこむ気にもなれない。ここは素直に甘えてもらっておいたほうがよさそうだ。

「うん。ありがとう」

夕子は柔らかな笑顔で「どういたしまして」と返す。僕は少しだけどきりとした。そのとき、遠くのお堂から、ズズズ…と戸を開く音がして我に返る。僕が音の出所を確かめようと振り向こうとした瞬間、

喉元に切っ先が突きつけられた。

理解ができない。断層和服の麗人は、僕のことを睨みつけているだけだ。後ろをちらと見ると、そこには巫女装束の小柄な少女がいた。いなりが刀に手を掛ける。

「動くな式神。主を殺されてもいいのか?」

低い声で、断層和服の麗人が言った。いなりはその言葉で動きを止める。ただ、牙を剥き出しにし、威嚇するように唸った。それに動じず、麗人は僕に話し掛ける。

「名を名乗れ」

「こ、神島 薫…」

名前を名乗るだけで、冷や汗が流れる。麗人は真琴や夕子にも睨みを効かせ、尋問を続ける。

「私の名前は皆川 双夜。見ての通り剣術を嗜んでいる。不用意な発言は私の手を動かすことになる。注意しろ」

「ああ。わかった」

「で、貴様何でここに来た。式神を連れている以上、普通の用事ではあるまい」

僕は桜姫さんの話をする。双夜はそれを僕の瞳を見ながら聞いた。やがて、僕の話が終わると、その刀の切っ先が近づく。

「そんな話私が信じると思ったのか?なめるのも大概にしたらどうだ?」

落ち着いているようで、内側で怒っていることに言葉の端々で気づく。ヤバイ。このままだと彼女は何をしでかすかわからない。僕はいなりとアイコンタクトをする。いなりは頷くとお札を3枚取り出し、左手の指の間にはさむ。

「双夜ちゃん!」

後ろの巫女装束の少女が、双夜に呼びかける。双夜はそれに気を取られた。僕はその隙を逃さず、首を刀から離す位置に動かす。同時に、いなりはお札を1枚投げる。双夜は僕のことを構うことができず、飛んでくるお札を切った。お札は切られた瞬間、燃えた。一連の間、僕は真琴と夕子を抱いて、全力疾走する。

「2連式札術、火炎猫!」

いなりはお札を投げると同時に、術をかける。お札が炎の猫となって、双夜に襲いかかった。双夜は横っ跳びでそれを避け、巫女装束の少女のところに急行する。

「赤花!」

双夜は巫女装束の少女―赤花に指示する。赤花は戸惑いながらも言霊を紡ぐ。

「我を襲う悪しき術を祓え!」

いなりの使った術が一瞬にして消えた。それと同時に双夜がいなり向けて飛び出す。いなりはそれに合わせて刀を抜いた。キーンと甲高い音が鳴る。いなりは双夜の刀を受け流し、後ろに跳びつつお札を投げる。

「3連式札術、炸裂針玉」

お札が無数の針のついた球になる。双夜は瞬時にしゃがみ、球をやり過ごす。球は後方の地面に落ちた瞬間、針が様々な方向に飛んだ。双夜はそれをたたき落とし、赤花は術で防いだ。

「そこまでだよ」

双夜がその声にこちらを向いた。いなりが勝ち誇った笑みを浮かべた。僕は赤花の後ろで、お札を構えていた。皆がいなりに気を払っている隙に回り込み、そしてチェックメイトを決めた。

「くっ…」

双夜は刀を収め、両手を上げた。赤花も同様のポーズをとる。

「なぁんだ。結構早く決着ついちゃいましたねぇ」

お堂の上から、声。その場にいた全員が声のする方を見る。お堂の上の空間が弾けると、そこにほのかが先ほどとは違う服装で立っていた。頭巾に高下駄、葉っぱでできた扇を持ち、服はお寺とかにいる厳しそうな人が着る服。ニヤついて笑うその顔は、間違いなくほのかのものだった。

「ほのか!」

いなりが呼ぶと、ほのかはお堂の上から消え、風と共に僕らの前に現れる。その横には、ワイルドな雰囲気を持つ男性と、穏やかな笑顔の男性がいた。

「たくっ。俺の手間を患わせるな」

ワイルドな雰囲気を持つ男性がほのかを小突く。

「青海坊さんだって黙って見てたじゃないですか」

ほのかがそれに毒を吐いて返す。

「まあ、ええやろ。そんなら、話しよか」

もう1人の男性が扇を振るう。それは意志ある風になって僕の持つお札を飛ばした。さらに、風が刀の周りに取り憑く。武装解除の風だと、僕は判断した。穏やかな笑顔の男性は、その表情を崩さず僕に頷いた。僕が思ったことを読んでいるといった感じだ。

「自己紹介がまだやったなぁ。ワイの名前は独学坊。この辺りの天狗のリーダーや。おおきにな」

穏やかな笑顔の男性、独学坊が礼をすると、横の2人も礼をした。続いてワイルドな雰囲気を持つ男性が自己紹介する。

「そこの修験者2人には自己紹介したが、俺の名前は青海坊だ。以後よろしく頼む」

「あたいの名前は遊星 ほのかってさっき言ったけど、あれは下界での名前。本当の名前は星炎丸。でもほのかって名前は気に入ってるから、そっちで呼んでね」

最後にほのかが自己紹介した。

「で、説明してもらうかの。ほのか」

いなりが強い口調で、ほのかを問いただす。対するほのかは余裕を持った態度で返す。

「その前に守人さんたち、呼ばなくていいんですか?」

その言葉で、ここにたま、白梅、守人の3人がいないことを思い出した。独学坊はほのかの頭をこつんと小突くと、

「おちょくる必要はないさかいに…天狗の本領、見せてもらおか」

と少し凄みを利かせて命令する。ほのかは少し顔の緩みを締め、地面を大きく蹴った。

わずかその蹴りだけで、地上25メートルまで跳ぶ。そのまま姿が一瞬で消えた。

「天狗の本職は道案内や。すぐに戻ってくるやろ」

独学坊は、空中に胡坐をかく。彼は僕らや双夜たちを一瞥してから、青海坊に話しかける。

「なかなかにおもろそうな連中や。なあ、青海坊」

「はい。ただ独学坊様の相手にはなりませんよ」

青海坊の言葉にカッカッカッと笑って返した。その青海坊は少し萎縮してる気がする。

「ん?」

笑いを突然やめ、無音状態になる。さわさわと言った風によって葉がこすれる音が良く聞こえる。

「来たか」

その言葉どおり、ほのかが風の中から現れる。後ろにはたま、白梅、守人の姿がある。

「全員揃ったようやし、話始めよか」

ほのかは独学坊の右隣に、青海坊は左隣に立つ。

秘密の会談が、始まった。


完全に弄ばれていると、カルナは感じた。

カルナの指示により、光球が自動追尾で桜姫を狙う。桜姫はそれを扇の一振りで消し去り、敢えて当たらないように、大量の魔術弾を放つ。カルナは自分の近くに飛ぶ魔術弾だけを打ち落とす。カルナが気を取られている隙に桜姫はカルナに近づき、見事なドロップキックをお見舞いする。カルナはそれを防護障壁で緩和させ、反撃とばかりに新たなカードを桜姫に投げた。絵柄は水。

「その水は天命に逆らう」

始動キー。カルナの言葉によってカードは魔術と化す。水が重力に逆らい桜姫に襲い掛かった。それを見ても桜姫は表情を崩さない。撫でるように縦に扇を振る。

それだけで、空間が切断された。

それはカルナの目の前まで切られ、水はそれによって魔術的効力を失い、落下した。桜姫がその空間の裂け目をつつくと、中から触手が飛び出してきた。カルナはそれを全て焼却する。

「最初の威勢はどうしたのかしら?防戦では私に届かなくてよ」

桜姫の挑発。それに反応してか、透きとおる2対の翼が、黒く変色した。

「愚弄するな!人間がぁあ!」

カルナは妖精、それもダークエルフに分類される。妖精は人間よりもか弱い存在であるが、それはエーテルに存在を依存しているからである。しかし、ダークエルフは違う。ダークエルフとは、妖精としての純潔が穢れ、闇に落ちた姿である。そのため、エーテルだけではなく、大気中の様々な物質を糧に行動できる。これにより、人間よりも様々な場所で、自分自身だけで生存できるようになるのだ。それゆえに、強靭な肉体も得ることができる。

「ふふふ…そうよ…」

桜姫は扇で口を隠した。笑っている口を見られたくなかったから。カルナは激昂し、そんなことなど気づいていない。淀んだ瞳が、光を失う。宙に漂うカードが、カルナを中心に周回運動を始める。

そして、カルナは、宣言した。

「眼前の敵は、我が炎で殲滅される」

カードが3枚飛んでいく。桜姫は初めて気を引き締めた。カードは複雑な軌道を描き、やがて炎に変わり、桜姫に襲い掛かる。

「まだ、容易いですわね」

扇を振ろうとした瞬間、あることに気づく。

(…カルナがいない)

炎に隠れてる間に、カルナが消失していた。桜姫は探そうかと思ったが、炎が近づいているため断念し、炎を消すことに集中する。そこへ、

無数の槍が襲い掛かった。

桜姫はその槍の放たれた方角を見る。そこには槍の刺さった荒野のカードを手に持つ、カルナの姿があった。翼が大きく開く。それは、彼女が本気であることを示していた。

「くっ…」

桜姫は無数の槍をかわしつつ、扇を舞わせる。炎だけでも消そうと必死だった。しかし、最後の槍が右腕を掠めた。そのままバランスを失いそうになるのを、スカートで調整して留める。そこを、カルナは爪で追撃した。桜姫は回し蹴りで弾き飛ばす。吹き飛ばされながらも、簡単な魔術弾を飛ばしてくる。それをまるでダンスのステップを踏むように軽やかに避けた。

「私の、私の邪魔を、するなぁ!」

カルナはカードを2枚、手に挟む。片方には雷のイラスト、もう片方には幾何学模様の魔法陣が描かれている。桜姫はどこからともなく日傘を取り出し、カルナに向けて構えた。

「雷は天罰。魔術はそれさえも再現するわ。フフ…フフフ……アハハハハハハハハハハ!!!そうよ!私の邪魔をするなら、この世から消えてしまえばいいのよ!」

狂気に満ちた口調で、カルナは言い放つ。対する桜姫はただ一言、宣言した。

「加減はするわ。せいぜい足掻きなさい」

そして、お互いの技が同時に、放たれた。


ジュヌエは城の最下層、自分の研究室に向かった。この城は4つの小さな城が東西南北に建てられ、中央に大きな城が建てられている。東西南北の城は城壁によって結ばれ、更に地下通路によって中央の城と結ばれる。この地下通路は単なる通路ではなく、城の補助施設として、様々な部屋が用意されている。研究室は地下通路より下にあった、貯蔵庫を改装して作られ、その下には牢獄が存在していた。ユイーシュとは違い、ジュヌエは魔術は学ぶものであるとする流派の重要人物だ。そんな彼女の研究室は、様々なモノで埋め尽くされていた。彼女はその中から、牢屋の鍵束を取り出した。

「ジュヌエ様ぁ〜…あっ…あっ…あんっ」

「もう、やめて、あたし、だめに、なっちゃう!」

「いひゅっ!いっひゃうっ!」

「でるぅ!でちゃっ…う!なんか、でちゃうよっ!」

牢屋からは少女の艶かしい声しか聞こえない。ジュヌエは敢えて靴音を鳴らしながら、牢屋の通路を通る。牢屋の中には様々な少女がいた。自慰行為にふける子。数人の男性に輪姦される子。1人の男の子に延々イカされる子。まだ年端もいかぬ少女すらいた。ジュヌエはそれらを無表情に見ては通り過ぎる。やがて、1人の少女のところで止まった。彼女はおむつをつけさせられ、赤ん坊と同じ格好をさせられ、両手両足を拘束されていた。口はおしゃぶりで塞がれ、涎掛けはそこからこぼれた涎で汚れている。

「ジュヌエ様。本日はそちらの娘ですか?」

真後ろから、声がした。そこにはメイド服を着た少女と、執事服を着た中性的な子供が背筋を伸ばし立っていた。ジュヌエは「ええ」と淡々とした口調で答えた。メイド服を着た少女が進言する。

「では、他の娘は休ませますか?」

ジュヌエは「任せるわ」と興味なさげに言った。今度は執事服の子供が進言する。

「男どもは、どうなさいます?」

ジュヌエは先程と同じように、興味なさげにこう答えた。

「構わないわ。始末しちゃって」

メイド服の少女と、執事服の子供が同時に礼をして立ち去る。ジュヌエは彼女がいる牢の鍵を開け、中に入る。彼女の用紙を視認したあと、靴を脱ぐ。冷たい石床の感覚が、足の裏に広がる。近づいてからまずおしゃぶりを取って少女の名前を聞いた。少女は恐怖に目を見開き、ジュヌエの言葉を聞こうとしない。ジュヌエは埒が明かないとばかりに、大きく前かがみになって、顔を近づける。少女はやっと自分の名前を言った。

「シャ、シャンティ…」

ジュヌエは次なる質問をする。

「あなた、怖い?この私が」

少女―シャンディはその質問には答えない。ジュヌエはそれを解っていて、ゆっくりと彼女の服を脱がし始める。カシャカシャと鎖が鳴る。抵抗しようにも、四肢は拘束されているのだ。ジュヌエは服を脱がせつつ、シャンディに話しかける。

「あなた、どうしてこうされてると思う?」

シャンディは首だけを横に振った。解らないと言う意味だろう。ジュヌエは邪悪な笑みを浮かべながら答えを言った。

「あなたはね、私の食事よ。つまりは餌ね」

シャンディは恐怖に顔を引きつらせる。だが、声は出なかった。喉が、あまりの恐怖に言うことを聞かないのだろう。

「あなただけではないわ。ここにいる人間の女どもは私の餌で、実験道具で、玩具なのよ」

そう言い終えた瞬間、遠くで野太い叫び声がした。それは輪唱のように繰り返し、止まない。ジュヌエはその声に意も介さず、シャンディの服を脱がし終わる。おむつと涎掛けだけになったシャンディは抵抗することさえ忘れていた。ただ、その声の意味を理解するのを恐れるだけだった。

「んっ!?

シャンディの口が、ジュヌエの口によって塞がれる。濃厚なキス。舌を這わせ、強引に唾液を吸わせる。シャンディは、為す術も無かった。抵抗しようにも、四肢が拘束されたこの状態では、無理やり突き飛ばすことさえできないのだ。10分ほどのキスの後、ジュヌエはそっと唇を離した。シャンディは咳き込むように呼吸を再開させ、そこで上気している自分を恨めしく思った。彼女はこれが始めての、ディープキスだった。

「ジュヌエ様。始末のほう、完了しました」

牢屋の後ろから、先程のメイド服の少女が顔を覗かせる。

「そう。掃除はしなくていいわ。あとで私が焼いとくから」

ジュヌエは少女のほうを見ないでそう返した。シャンディはメイドの姿に驚愕する。白かったエプロンドレスのほとんどが赤に染まっていた。顔にも飛び散った赤は、どろりと地面に滴っている。彼女はそれが何であるかを、理解した。

「あ、あ、ああああああああああああああああああっっ!!!!!!

やっと、シャンディは叫んだ。だが、ジュヌエはそれにも動じず、彼女の乳房を弄り始める。

「ひゃぁっ!」

シャンディは自らが感じた衝動に身震いした。急に体が火照り始める。乳房や、乳首を弄られるだけで、頭の中が跳んでしまいそうになる。

「もう効いてるのかしら?私の毒」

シャンディはその言葉を聞いて、理解しようとした。しかし、頭が常に真っ白になりかけるので、理解できそうにも無い。ジュヌエは舌まで使いながら、彼女の胸を愛撫しつつ、説明する。

「私は人間じゃないのよ。正確には元人間。今の種族は淫魔。夢魔とヴァンパイアに近い種族で、人の性液や体液を得ることで命を保つ存在。悪魔との契約でね。長い命を得るために支払った対価みたいなものよ。で、淫魔となった私の唾液には、人間を淫靡にさせる催淫効果やあるのよ。それをあなたに飲ませたから、今あなたの感度は…」

ジュヌエは乳首を軽く噛んだ。

「あ、あ、あああああんんっ!!」

シャンディが甘美な声を上げた。

「ビンビンなのよ。解ったかしら?」

シャンディは、内側から来る感覚に悶えるだけだ。それを喜んだような表情で見つめるジュヌエ。その手が、おむつカバーをはずし始める。前あてを開けた瞬間、強烈な匂いが牢の中に漂った。中のおむつは何度も出されたおしっこでぐしょぐしょになっていた。それを全て捲ると、どろどろになった秘所が顔を出す。風に触れただけで、シャンディの喘ぎ声が出た。毒が更に効き、性感帯が軽い刺激だけで猛烈に反応するほどになっていた。

「あーむっ」

そこへ、ジュヌエが飛び込んだ。秘所に舌が触れただけで、シャンディの体が激しく震える。ジュヌエは顔をどろどろの粘着液で汚しながらも、舌で秘所やクリトリスを愛撫し始めた。シャンディの頭の中が、空を飛ぶほどはじける。研ぎ澄まされた性感帯の感覚が、彼女のほかの感覚を奪っていった。

「あ、は、ああああああっ!」

シャンディは容易くイッた。同時におしっこを漏らしつつ、彼女は痙攣し続ける。ジュヌエはそのおしっこごと、全てを飲み干す。

「うん。なかなかね」

全てを飲み干すと、感想だけを言い残し、彼女は牢から出た。服はこぼれた愛液やおしっこで汚れてしまっている。今度は執事服の中性的な子供が牢の横で待っていた。

「代えのお召し物は、上の寝室にてご用意して御座います」

「ティエル」

執事服を着た中性的な子供―ティエルは、自らの名前を呼ばれ、改めて畏まる。ジュヌエはティエルに指示を出す。

「彼女の召し物を変えて差し上げなさい。あと、しばらくは私の毒が効いていると思うから、例のおしゃぶりを与えておきなさい。あと、そこの靴は破棄してしまっても構いません」

ティエルは礼をして「仰せのままに」と返した。ジュヌエは裸足のまま自室に戻る。

「ジュヌエ様」

今度はメイド服の少女だ。彼女は階段を上がったところでジュヌエを待っていた。服は既に着替えたのか、真っ白なエプロンドレスに戻っていた。

「なにかしら、ウェルチ」

ジュヌエが彼女―ウェルチの横を通り過ぎると、ウェルチはジュヌエの後を付いていく。ジュヌエの金色のロングヘアーが、城の蝋燭の火に照らされる。対するウェルチの赤のショートウェーブは、妖しく輝くように見えた。

「城上層に、強力な魔力反応です。恐らくかなりの実力者かと」

その薄緑の瞳が鋭く光る。ウェルチはジュヌエに迎撃すべきかを問うた。対するジュヌエはその感覚を懐かしく思えた。そして彼女は合点し、その提案を否定した。

「大丈夫ですわ。彼女は我が組織にとって旧友みたいなものですから」

赤紫の双眸が、喜んでいるように輝いた。そして、ジュヌエはすぐに身支度を整え、「彼女」を出迎えに向かった。


守人が渡した桜姫さんの手紙を、僕らから少し離れたところで独学坊は熟読している。その間に、ほのかから先程の行為についての説明を受けていた。

「私たち天狗は山の神として恐れられると同時に敬われる存在です。故に我々は容易に人間に屈してはいけないのです。そこで…」

その後を青海坊が続ける。

「お前達の力量を図る意味で、戦闘をさせたということだ。俺らと対等に話せる力量があるかを知るためにな。本来は俺ら自身が相手になるのを…」

今度はほのかがその後を続ける。

「私の機転であなたたち自身を戦闘させたのです。別に私たちが直接やる必要性はないですから」

青海坊はほのかの頭を掻き毟りながら、

「というのはこいつの建前で、本当は戦闘が面倒くさかっただけだろ」

ほのかはムスッとし、口を尖らせ、

「いいじゃないですか。力量は測れたんですし」

と拗ねた口調で言った。

「先ほどはすまなかった。無闇に攻撃してしまって」

双夜が頭を深々と下げて謝った。僕は手を左右に振りながら「僕らも反撃しちゃいましたし…」と喧嘩両成敗を主張する。すると赤花が僕の予想を裏切る言葉を言った。

「でも、うちの学園の生徒に手を出しちゃったわけだし…」

ん?うちの学園の生徒?

「それも副会長の妹さんのご友人とは…」

副会長?それって…

「大丈夫ですよ。このことは姉さんには言いませんし、ここに来てることも姉さんには言ってませんから」

僕の後ろから守人が宥めるように言った。それを聞いて2人はほっと胸をなでおろした。そのあと、たまが「そういえば俺ら自己紹介してにゃいにゃ」と提言する。そういえば、自己紹介を全くしていなかった。まあ、必要なさそうなのが1人いるけど。

「改めて自己紹介する。私の名前は皆川 双夜。桜ケ丘学園高等部生徒会で書記を担当している」

「沢城 赤花です。えっと私は会計です。生徒会の。お姉ちゃんにはいつもお世話になってるよ。守ちゃん」

2人の自己紹介の後、こちらの自己紹介をした。全員終わると同時に、独学坊がこちらに歩いてきた。

「おおきになお嬢ちゃん。手紙は預かっとくわ。んで悪いんやけど…」

守人に礼を言ったあと、独学坊は袖から筆をとり出してから紙を空中に浮かせ、何やら文章を書いていた。紙は時代劇とかで出る果たし状みたいなもの。そこに漢字とくずし仮名の文章を書いている。まさしく昔の手紙だった。

「これ、桜姫さんに渡してくれへんか?」

最後に自分の羽から羽根を1枚取り、手紙の最後、独学坊の名前が書かれているところの下を払う。すると、今までなかったのに、その場所に印が現れた。天狗の印鑑は、自分の羽根なのか。

「わかりました。ですが、叔母様は忙しいお人なので渡せるかどうか…」

守人が恐縮そうに言うと、独学坊は「かまへんかまへん」と区切りを付けた後、

「あの人に手紙を届けるにはここが一番なんや」

いつ奪ったのか、独学坊の手には僕らが待ってきた地図があった。そこに筆で印をつける。

「あれ?」

「ここって…」

○をつけられた場所。そこは、僕らがよく知る場所だった。


「準備はいい?セフィリア」

スクーネは自分の戦闘用服装に着替え、準備満タンだ。

「はい。お姉様ぁ」

セフィリアは自分の使い魔の準備を終え、魔術士用のローブを羽織る。

「ルコナも、もう大丈夫?」

「声が大きいです。上姉上。……看病、ありがとうございました」

スクーネの問いに、黒マントを身に付けたルコナは迷惑そうに答える。だが、最後は声が小さいながらも、感謝の言葉だった。顔を赤らめるあたり、まだまだ子供だ。

「もうすぐ夕方になるし、そろそろ捕獲したいな」

「ではぁ、行きましょう〜。おむつもきれいきれいですし」

「そういうことは言わないで下さい。下姉上」

3人はそんなやり取りをしながら、ホテルを出た。日は少しずつ陰り始め、やがて夜になるだろう。

そう、夜が訪れる。


すべての魔術士にとって、都合のいい、夜が。

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