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トップ  >  梓作  >  女子トイレの噂 第3話
 

 


(結衣どうしたんだろ…。生理痛かな?でも、そんな風じゃなかった気もする。私、結衣になにか気に障ることしたのかなぁ)


 


部屋で一人で考え込んでいても、答えが出なかった。そんな状況になってから、数週間、劇的に二人の状況が変わる事態が起こる。


 



それは、結衣と話すことがなくなってから、3週間が経ったある日のこと。あれ以来、部活などで必要最低限の会話を交わすだけで、結衣が莉緒のことを避けているのは傍目にも明らかだった。


 


その日、結衣ときちんと話をしよう!と決めていた莉緒は、部活が終わった後に、結衣の後ろを追いかけた。教室が出たところで声をかけようと思っていたのだったが、結衣はそのままトイレに入ってしまった。


 


しかし、人前で結衣と話すと、また争いになって、先輩たちに事情を細かく聞かれることを恐れた莉緒は、トイレの中で結衣と話そうと思い、結衣を追ってトイレへ入っていった。


 


「結、あ…」


 


話しかけようと思ったら、その前に結衣は気付かずに一番奥の個室に入っていた。おそらく、トイレの中に莉緒がいることには気付いていないのだろう。


 


 その時、莉緒はあることを思い出していた。それは先週の大掃除の時間のことだった。莉緒のクラスは、西棟3階の非常階段横のトイレも担当場所に含まれている。このトイレ、こないだの先輩の噂で聞いた、おむつが捨てられているトイレだ。


 


莉緒の他に2人の子と一緒に掃除当番だったのだが、先輩の言葉「ここだけの秘密…」を守るため、自分から個室の掃除を申し出た。


 


「じゃあ私の個室の汚物箱の掃除するね」


 


「莉緒ちゃんありがとー」


 


汚物箱の掃除は汚いものにも触れることがあり、みんなあまりやりたがらないのだ。


 


莉緒は早速手前の個室から汚物箱を順番に取り出してごみを集めていったが、ほとんど使われることのないトイレのため、ゴミらしいゴミはほとんどなかった。時折ティッシュを丸めたものや、生理用品も出てきたが、ほんの少しだった。


 


やっぱり先輩の噂話はただの噂だったのか…、そう思って最後の一番奥の個室の汚物入れを手にした瞬間、明らかな違和感を感じた。今までにないくらいの重さだ。普通のトイレの汚物箱でも、おそらくここまでは重くならないだろう。


 


瞬間、莉緒はおむつだと察した。そのまま広い所に出してゴミ袋に入れてしまうのであるが、莉緒は他の二人にばれないようにそっと汚物入れを個室に戻して、自分も個室の中に入った。


 


少しドキドキしたが、胸の高鳴りを抑えながら音がしないように汚物入れの蓋をそっと開けた。中を覗いてみると、白くゴワゴワしたものが無理やりに押し込められていた。よく目をこらしてみると、なんだか王冠みたいな絵も描いてある。


 


(これが、ムーニーマンなの…?)


 


 



妹もいない莉緒にとっては、自分がされていた頃をのぞけば、紙おむつと触れ合う機会などない。お母さん曰く、莉緒自身も3歳になる前にはおむつを卒業していたらしいので、実質今回初めて見たことになる。


 


重さから考えて、おそらく中は濡れているはずだ。さすがにおむつを出して広げるのは衛生的にも人道的にも良くないと思い、他の二人に勘付かれないようにそっとゴミ袋に捨てておいた。紙おむつ以外に全くゴミが入ってなかったのを考えると、おそらく前の掃除の日から今日までにこの個室を使ったのは、おむつを使った人間だろうと莉緒は考えた。


 


その個室に今入っていったのが結衣だった。先輩たちは、このトイレは吹奏楽部しか使わないと言っていたが、実のところ、普段使われないぶん、あまり清掃が行き届いていないため、敬遠されがちなのだ。


 


そのトイレの一番奥に入っていったのが、結衣。莉緒は嫌でも変な想像をせざるを得なかった。結衣がトイレに入ってから3分ほど経過するが、中でなにかやっている様子はない。用を足している感じでもない。なにかごそごそしている感じはするが、何をしているかはわからなかった。


 


結衣には悪いと思ったが、こっそり個室の前まで近づき、耳をそばだてていた。すると聞こえてきたのは、紙がこすれるような音と、結衣の小さな「うん、漏れてない」という微かなささやきだった。


 


 


これを聞いて、莉緒は結衣がおむつの犯人だと確信した。その場で結衣に問いただしても良かったのだが、どうも今の二人の関係を考えていると、なんと声をかけていいかわからなかった。しかも、相手は個室でおむつを当てている可能性が大なのだ。


 


莉緒が何もできずに個室の前で立ち尽くしていると、着替えを終えたらしい結衣が出てきた。用事もないのに結衣が入った個室の前に立っていた莉緒が、どこから見てもおかしいだろう。


 


「え、莉緒?こんなとこでなにしてるの?」


 


「あ、その…」


 


莉緒は返事に困った。本当は前のことを謝りたくて追ってきたが、そこで聞いてはいけないことを聞いてしまったのだから。


 


「莉緒、もしかして中で私がなにやってたかわかった?」


 


気付いていた莉緒ではあったが、それをここで結衣に向かって言うことは躊躇われた。結衣を傷つけてしまうと思ったのだ。黙っていた莉緒に、「今日時間ある?」と結衣は聞いた。


 


「大丈夫だけど…」


 


「今日、うちに来て欲しいの」


 


時間があると言った手前、断ることはできない。気まずい雰囲気のまま、二人は結衣の家に向かうことになった。


 

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